マルチメディア総合研究所の100%子会社であるアイピーモバイルは9月30日、2HGz帯を利用したモバイルデータ通信事業に参入するため、総務省に基地局開設の免許を申請した。
アイピーモバイルは、マルチメディア総合研究所がTD-CDMA技術を持つ米IPWirelessとパートナー契約を結び、2002年11月20日に設立された。現在の資本金は4億5000万円。国内では最も早い2003年4月に実験免許を取得し、NTTコミュニケーションズと共同で実験を進めた。
「2001年からTD-CDMA技術に注目し、約5年かけて免許の申請ができた。」と語ったアイピーモバイル代表取締役杉村五男氏 |
申請が認可されれば、アイピーモバイルは2006年10月から東名阪エリアを中心に、月額2500円から5000円程度の定額制で、TD-CDMA方式による下り5.2Mbps、上り848kbpsの高速モバイル通信サービスを開始する。2007年には下り22.1Mbps、上り2.64Mbpsまで通信速度を高速化し、さらに2010年にはサービスエリアを全国に広げる予定だ。
また、同社は10月を目途に第三者割当増資を実施する。合計7社から8億7500万円の出資を受ける予定で、これによりアイピーモバイルの資本金は13億2500万円となる。増資引受先と出資額は、IIJグループのアイアイジェイテクノロジーが5000万円、翔泳社が5000万円、楽天グループの楽天ストラテジックパートナーズが2500万円、CSKグループのCSKプリンシパルズが非公開となっており、残り3社については現時点で社名も金額も公表できないという。ただし、「米メディア大手のリバティグローバルが免許取得後に200億円以上出資する方針」という新聞報道があったことから、非公表企業のうちの1つとしてリバティが有力だろう。
出資が決まっている企業は、CSKがバックオフィス系のシステムを含めて協力し、楽天や翔泳社がコンテンツを提供する予定で、IIJはインフラやソリューションを提供する。
アイピーモバイルは申請が認可され次第、今年度中に資本金を70億円から80億円程度に増やす予定で、最終的には資本金を400億から600億円程度にする計画だ。アイピーモバイル代表取締役の杉村五男氏は「免許を取得することを前提としての話だ」その計画の詳細は明らかにしなかった。また、米リバティによる出資について聞かれても「ノーコメント」を繰り返した。
同社はサービス開始後、2008年度後半からの単月黒字、2009年度の年間黒字を目指しており、2009年には約1000億円の収入を見込む。また、その時期の株式上場も検討している。ユーザー数については、2008年にモバイルカードでの通信で100万ユーザー、モデム型機器や組み込み型機器などで40万ユーザーの合計140万ユーザーを目指している。
サービスは当面データ通信のみを提供する。アイピーモバイルで自らサービスを提供するほか、MVNO(仮想移動体サービス事業者)のビジネスモデルも検討している。MVNOサービスについて交渉中の企業はあるものの、杉村氏は「認可が下りないことには具体的な話ができない」とした。音声サービスについても「環境が整ったらサービスを実施したい」(同氏)と意欲を見せたが、時期など具体的な話は一切なかった。端末や基地局の提供については、「それぞれ国内外数社と相談中だ」と言う。基地局は最大で全国8500局程度設置する予定だ。
今回、携帯電話事業の免許を新規に申請したのは、アイピーモバイルのほかに、周波数帯は1.7GHzと異なるもののソフトバンクのBBモバイル、イー・アクセスのイー・モバイルの3社だった。総務省は1.7GHz帯で2社、2GHz帯で1社の参入を認める方針だ。だが、申請した3社がこのまますんなりと認められるとはかぎらない。総務省は各社が提出した事業計画書を審査して、年内に免許の交付先を決める予定だ。審査では、通信サービスということで資本・財務力が焦点になる見込み。そのために、イー・アクセスとアイピーモバイルは、申請日に合わせて大幅な増資計画を発表しているわけだ。
12年ぶりに携帯電話事業の新規参入を狙う3社
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*基地局など設備投資総額は数千億円とされるが、海外の機器メーカーが負担して、それをソフトバンクがリースする
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