「携帯電話のデータ通信料金のビット単価は、今のままだと2007年には固定通信の50倍になる。この状況を変えるには、WiMAXの導入が不可欠だ」--野村総合研究所情報・通信コンサルティング二部上席コンサルタントの桑津浩太郎氏は7月26日、無線ブロードバンドサービスの今後について分析した結果を紹介し、このように訴えた。
桑津氏によると、固定のブロードバンドサービスは高速化と低料金化が進んでいることから、1Mbpsあたりの単価は2005年で233円となっており、2007年には103円にまで下がるという。一方、携帯電話のデータ通信における1Mbpsあたりの単価は2005年で6524円となっており、現在のままだと2007年でも5383円にしかならない。「番号ポータビリティの導入による競争があっても、3000円台までしか下がらないだろう」(桑津氏)
これは、携帯電話用の周波数帯域が限られているためだと桑津氏は話す。すでに大手通信事業者は都心部で電波が逼迫(ひっぱく)しており、新たな周波数の割り当てを求めている段階だ。特にデータ通信の利用は都市部に集中しており、都心の需要密度は郊外の10〜30倍を超えるという。
総務省も都心部に限って、既存の通信事業者に新たに1.7GHz帯の周波数20MHz幅を割り当てる方針を示している(関連記事)。ただし、すでに割り当てられた周波数の1MHzあたりの利用者数が100万人以上の場合のみ、新たに周波数の割り当てを受けることができる。
この総務省の方針では、携帯電話のデータ通信の高速化は難しいと桑津氏は見る。「従来型のサービスならともかく、1〜10Mbpsのデータ通信定額サービスを提供しようとするならば、1MHzあたりの利用者数は50万人が目安ではないか」(同氏)。総務省が用意した20MHz幅では1500万加入しか収容できず、現在の携帯電話利用者の20%弱が高速データ定額サービスに移行すると周波数が足りなくなるというのだ。
さらに今後デジタル家電など無線通信を行う端末が増えてくれば、周波数はさらに足りなくなる。デジタルカメラやポータブルオーディオプレイヤー、次世代ゲーム機などでは無線通信へのニーズが特に高く、2007年には2150万台の機器が無線に接続する可能性があるという。現在でもゲーム機では無線LANに対応しているが、「無線LANの場合はファイアウォールなどの設定が大変になる。(携帯電話のように)複雑な設定をせずに使える無線技術への期待は大きい」(桑津氏)とした。
このように無線通信への需要が高まると、周波数の限られた携帯電話だけでは対応できない。そこで桑津氏が注目するのがWiMAXだ。すでにKDDIなどは、WiMAXとCDMA2000のデュアル端末を展開すると表明している(関連記事)。また、現在総務省ではWiMAXを含めた次世代無線技術について検討する「ワイヤレスブロードバンド推進研究会」が開かれており、WiMAXについても議論されている。
桑津氏はWiMAXであれば10〜30Mbpsの通信速度が実現可能であり、無線LANとの親和性が高いため端末装置の価格も抑えられるとWiMAXの利点を述べ、周波数幅としては40MHz幅があればニーズを満たせるとした。
WiMAXの周波数帯については、「韓国ではWiMAXの韓国版であるWiBROを国をあげて推進している。日本も日本発の強みと世界標準を組み合わせ、産業競争力を高める必要がある」と指摘し、より周波数が低く、設備投資額を抑えられる1.9GHz帯や2GHz帯、2.5GHz帯を使うべきとした。1.9GHz帯は現在PHSが利用しているが、「PHSにOFDM(直交波周波数分割多重:通信速度を高める技術の1つ)技術などWiMAX系の技術を組み合わせた『PHS over WiMAX』などを検討する必要がある」と訴えた。
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