松下電器産業などが出資するCSCは5月10日、同日よりウィルコムのPHS回線を利用して機器の遠隔操作などができるサービス「MyAccessサービス」を開始すると発表した。同社が開発した通信モジュールを利用することで、メーカーが短期間に対応機器を開発できる点が特徴だ。玩具メーカーなどのサービス事業者に向けて提供し、今年度中に10万件の利用を目指す。
CSCは松下電器産業で無線通信事業に携わってきた村田榮一郎氏が2005年1月に設立した企業。松下電器のほか、加賀電子、タカラモバイルエンタテインメント、東洋アイティーホールディングスなどが出資している。
通信モジュール「CSCエンジン」の形状サンプル。CSCが開発、本多エレクトロンが製造を担当する |
MyAccessサービスは監視カメラや玩具、センサーなどに同社の通信モジュール「CSCエンジン」を組み込むことで、携帯電話やPCからインターネットを通じて遠隔操作できるというものだ。具体的にはまず、利用者は携帯電話やPCからインターネットでCSCの「MyAccessサービスセンター」に接続する。センターはウィルコムのPHS網を通じてCSCエンジンに接続し、機器を操作する。同様に機器からPCや携帯電話などに情報を発信することもできるという。
具体的な利用用途としては、ガスや水道メーターにCSCエンジンを取り付けて利用状況のデータを収集したり、防犯カメラとCSCエンジンを組み合わせて家の様子を見るといったことが考えられる。また、火災報知機や自動車にCSCエンジン取り付けて、問題が起きた場合に警備会社や保険会社に通知を行うことも可能という。
CSCは通信網をウィルコムから借り受けるMVNO(仮想移動体サービス事業者)の業態をとり、サービス事業者から受け取るインフラの利用料金が主な収益源となる。 ウィルコムの通信網を採用したのは、「通信網をMVNOに貸し出している企業は他にない。また、パケット通信のみのMVNOに対しても社内の体制を整えてくれたことが大きい」とCSC代表取締役社長の村田氏は話した。
ウィルコムはMyAccessサービス向けに、低トラフィック向けの定額料金プランを用意したという。具体的な料金については明らかにしていないが、月額数百円程度とみられる。「機器への通信は人間同士の通話と違って、多少の遅延は問題にならない。空いた帯域を活用することで、回線の利用効率を高めることができる」(村田氏)
サービス事業者はCSCとビジネスパートナー契約を結ぶ。利用者は料金をサービス事業者に支払うため、CSCとの直接契約は必要ないという。すでに20社ほどが同社のパートナーとなっており、今年度中に50社に増やしたいと村田氏は話している。
CSCでは2005年度の事業目標について、加入端末数が10万件、CSCエンジンの販売やサービス収入による売上高が9億1000万円としており、初年度から黒字化させる考えだ。「MyAccessサービスセンターのインフラ設備は出資会社に業務委託しており、実際の固定費は非常に安い」(村田氏)として、黒字化は達成可能と見ている。2007年度には加入端末数を60万件、売上高34億円、利益5億円とする目標だ。
タカラが開発した「画像送信赤ちゃんメリー」(上)。取り付け部分にカメラがついており、赤ん坊の画像を送信する |
CSCのパートナー企業は同日、MyAccessサービスを利用した機器のデモンストレーションを行った。例えばタカラは赤ん坊用のおもちゃにカメラとCSCエンジンを取り付け、携帯電話から赤ん坊の顔が見られる「画像送信赤ちゃんメリー」などを展示していた。おもちゃの価格は2万4800円で、月額利用料金は携帯電話の1ユーザーあたり500円となる見込み。同社では2005年度中の開発を目指している。
また、松下電器産業はRFIDタグを使って子どもの登下校の様子を確認するサービスを提案していた。RFIDのリーダライターとCSCエンジンを組み合わせて校門に設置し、RFIDタグを持った子どもが前を通ると検知して親の携帯電話に「子どもが学校に着いた」というメールを送信する。通信にPHS網を利用するため、新たな回線工事が必要なく柔軟に設置場所を設定できるメリットがあるという。
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