KDDIのグループ会社から、カーライル・グループを筆頭株主とする企業として10月1日に生まれ変わったDDIポケット。2005年2月1日には社名を「ウィルコム」と改め、新たなブランドと戦略の下でサービスを拡充していくという。
新社名ウィルコム(WILLCOM)は、同社が今後5年間で約700億円の投資を行い構築する新たなネットワーク「Wireless IP Local Loop」の頭文字となるWILLと、より快適で利便性の高い通信サービスを提供するという同社の意思(Will)、そしてワイヤレス通信が実現する未来(未来形のWill)を、ワイヤレスコミュニケーション(Communication)で実現するという意味が込められているのだという。DDIポケット代表取締役社長の山下孟男氏は、「Wireless IP Local Loopという進化したネットワークを持つオンリーワン企業として、独自のポジショニングを確立するとともに、売上の飛躍的な増大をめざす」としている。
DDIポケット代表取締役社長 山下孟男氏
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Wireless IP Local Loopとは、現在の無線ネットワークの基地局が1基地局に対し4チャネル、各チャネルの速度が32kbpsとなっているのに対し、基地局ごとのチャネルを14チャネル以上、各チャネルの速度は32kbpsまたは64kbpsとするもの。さらに同ネットワークは、現在バックボーンでNTTの地域網に依存していた部分に、ITXという独自バイパス装置を設置するとともに、データサービスのみで利用している同社のIP網を音声にも利用するという計画や、データ通信に新たな圧縮サーバを利用し、従来一部ユーザーに対し2倍程度の圧縮率を提供していたものを、4倍〜10倍程度の圧縮率を全ユーザーに提供するといった計画も含まれている。この新ネットワークにより、「高品質を保ったまま高速化、多チャンネル化が実現し、IP網の利用で安価なサービスも実現できる」(DDIポケット執行役員の喜久川政樹氏)としている。
山下氏は、これまでのKDDIグループ会社としてのDDIポケットについて、「グループとしては携帯電話事業に注力しているため、DDIポケットは安いモバイルデータサービスを提供するのみの企業として位置づけられ、音声事業は縮小か撤退の方向、キャッシュフローも負債返済が優先という状況だった。また、営業活動もKDDIグループ連携が中心となっていた」と説明する。新会社はグループのしがらみから開放されることになるが、これを機に同社は「安いだけでなく高速なモバイルデータサービスを提供し、音声事業もPHSの優位性を生かして拡大する。キャッシュフローも独自の選択と集中で、発展を見込める分野に積極的に投資し、営業活動は幅広いパートナーシップ戦略を展開する」(山下氏)としている。
山下氏は、最初の1年の事業展開として、「まずは手堅い経営を実践しつつ、飛躍に向けた改革を推進する」としている。具体的には、データ通信AirH”サービスに新たな圧縮サーバを導入し、テキストデータを体感1M程度にまで高速化すること、新社名やブランディングを浸透させ、パートナーシップを強化することでマーケティング体制を一新することなどを挙げている。データ通信については、圧縮サーバの導入後、基地局のチャネル数を8チャネルに束ねることで、動画など圧縮できないデータも256kpbsまで高速化するサービスを年度内に開始したいとしている。
来年度以降については、「音声・データ両面で市場を拡大し、成長軌道に乗せる」(山下氏)という。データ通信では、チャネル速度を32kbpsから64kpbsとすることでさらなる高速化を実現するとしている。音声通信については、ユーザビリティやデザインを強化した端末や、特定ニーズに対応した安心だフォンなどの端末を強化したいとしている。また、端末にPC的な機能を搭載するとともに、人体にやさしい低電磁波なPHSの特性を生かし、マーケットをより拡大していくと山下氏は述べた。
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