サンフランシスコ発--Intelの最高技術責任者(CTO)Pat Gelsingerは9日(米国時間)、インターネットをアップグレードする必要があると語り、セキュリティや信頼性、回線容量の逼迫などの差し迫った問題に対処するための、各種の機能をもった新たなレイヤー(層)を追加するよう訴えた。
Gelsingerは正しい方向へのステップとして、Internetを舞台に活動する実験ネットワーク「PlanetLab」を挙げた。このプロジェクトは、インターネットにインテリジェンスとアダプタビリティを追加することを目的に2002年に開始されたもので、Hewlett-Packard(HP)とIntelは現在、このプロジェクトの商用化に取り組んでいる。また同氏は、米国のPublic Broadcasting ServiceがハイビジョンTV番組の放送にPlanetLabを利用することも明らかにした。Gelsingerによるこれらの発表は、当地で開かれている「Intel Developer Forum(IDF)」での講演のなかで行われたもの。
Gelsingerは「われわれが現在やっている仕事は、明日のインターネットの土台を築くことなのだと思っている」と語り、PlanetLabの成果は「新たなインターネット」になると述べた。
ネットワーク上のサーバは、PlanetLabに新たなサービス層を提供する、とGelsingerは説明した。たとえばイベントをモニタするためのイベント処理サービスや、コンピュータ間の接続を調整するネットワークマッピング、情報の保存場所を最適化するコンテンツ配信サービス、ブロードキャストを効率的に行なうためのウェブキャスティングといったサービスがこの層に含まれる。
Gelsingerは、PlanetLabがインターネットを改善する可能性を示すものとして、現在行なわれている2つの研究を紹介した。1つはコンピュータ攻撃と戦うカリフォルニア大学バークレー校のプロジェクトで、Public Health for the Internetというこのプロジェクトでは、ネットワーク攻撃を監視し、その出所を特定できるシステムを開発したとGelsingerは語った。この情報は企業のファイアウォールアプリケーションやインターネットサービスプロバイダに送信され、セキュリティ強化に利用されるという。
もう1つの事例は、カーネギーメロン大学で行なわれている、ウェブ放送を改善するプロジェクトだ。このプロジェクトではメディアプロキシサーバを設置することにより、コンテンツを配信しているメインのコンピュータの負荷を減らし、より高品質なデータ伝送を実現している、とGelsingerは説明した。
Gelsingerは、「End System Multicast」というPlanetLabの技術を、講演のなかで実演してみせた。このデモでは、まずステージ上に置かれたディスプレイのなかに、Gelsingerの講演を映したライブのウェブ放送が表示されている。そして、この放送を配信しているメインのマシンに複数のコンピュータが新たに接続すると、放送の画質が低下したが、しかしPlanetLabのノードがネットワークに追加されると、このノードがコンピュータへのウェブ配信タスクを引き継いだために、全体の画質が元に戻った。
Gelsingerは、インターネット・インフラプロバイダのAkamai Technologiesを引き合いに出し、このウェブを使った放送システムは、Akamaiが提供するサービスの適応度を高めたものにあたると説明した。「これはPlanetLab(のネットワーク)をベースにした、未来のAkamaiだ、と考えて欲しい」(Gelsinger)
GelsingerはCisco Systemsなどのネットワーク関連企業各社による、既存のInternetインフラを改善する取り組みを称賛したが、しかしこうした取り組みはInternet2の複雑さや、IPv6への移行などの問題に対処する上では不十分だとも述べている。
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