次世代無線ネットワークの標準策定に関して、第2の業界グループが仕様の提案を行った。この標準は、データ転送速度を現行の4倍にまで引き上げることをねらったものだ。
TGn Syncは米国時間16日、IEEE 802.11nタスクグループに対して仕様の提案を行ったと発表した。TGn Syncは、先週末に同じく802.11nタスクグループに対して仕様提案を行ったWWiSE(World Wide Spectrum Efficiency)のライバルにあたる。IEEEへの仕様提案は、先週13日が締め切りだった。
802.11nを使った通信では、実測ベースのスループットが最大で100Mbpsまで上がることになる。これに対し、現行最速のWi-Fi標準である802.11gの最高速度は54Mbpsとされているが、平均的なスループットはその半分程度である。
これまでの無線技術標準は、異なる仕様を支持するライバル団体同士が争った後に決まっていた。だが、今回の802.11nに関してはどちらの案もよく似た技術をベースにしたものであることから、大きな争いは起こらないだろうとアナリストらは予測している。WWiSEとTGn Syncは、どちらもMIMO(Multiple Input and Multiple Output)技術を仕様の中核に据えている。
「提案内容が大幅に異なっていた802.11gとは異なり、WWiSEとTGn Syncの提案は見かけよりは似通っている」と、調査会社Farpoint GroupのアナリストCraig Mathias。同氏の予測では「両陣営が頑固に主張を通そうとしなければ、予想よりも短期間に標準がまとまりそうだ」という。
802.11nの最初のドラフトは2005年半ばに登場するとみられ、2006年末〜2007年はじめ頃には標準化が完了する予定だ。これに対して、Mathiasの予想では、遅くとも予定より1年ほど早く標準化が完了する可能性もあるという。
両提案の違いについては、9月半ばにドイツのベルリンで開催されるIEEEの会合で検討される予定だ。両者の違いとしては、TGn Syncの仕様では802.11nネットワークに接続された電話向けに消費電力を削減する機構が盛り込まれている、などの例がある。
さらにTGn Syncの提案では、将来の製品での互換性を保障するために、使用する無線帯域幅を広げるよう求めている。こうしておけば、さまざまな用途を持つ製品が802.11nを使えるようになると、チップメーカーAtherosの製品マネージャーで、TGn Syncの広報を担当するSheng Liは述べている。
「われわれは、中核技術の上に特別な機能を追加するかたちで、たとえば携帯電話や高品位テレビ(HDTV)、Blu-ray製品、企業向けのネットワーク機器など、特定の市場や幅広い製品をうまくサポートできるようにしたいと考えている」(Li)
また、LiによるとTGn Syncでは640Mbps前後のスループットを実現する方法を探しているという。これに対し、WWiSEの最大速度は540Mbpsとなっている。
Intelやソニー、Cisco Systems、Nokiaなどが参加するTGn Syncでは、WWiSEに比べて参加企業の業種も多岐にわたり、コンピュータ関連以外でのWi-Fi利用も視野に入れているとLiは語った。
なお、WWiSEには、Airgo Networks、Bermai、Broadcom、Conexant Systems、STMicroelectronics、Texas Instrumentsの各社が参加している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」