米電気電子技術者協会(IEEE)が「WiMAX」として知られる重要な無線ブロードバンド仕様を承認した。安価な高速インターネットアクセスを実現する鍵といわれる同技術に大きな力添えが加わることになる。
WiMAXは、最大通信速度が75Mbpsで、長距離での双方向インターネットアクセスを実現する無線技術だ。WiMAX支持者は、同技術について、最大30マイル(約48km)離れて設置したアンテナ間でデータ通信を行うことが可能で、カバー範囲は半径1マイル(約1.6km)以上、現在のDSLやケーブルなどのブロードバンドを上回る帯域を実現すると主張している。
この結果、WiMAXは遠隔地域にブロードバンド技術をもたらすコストを削減できることから、新たなブロードバンド競争に門戸が開かれ、低価格化と消費者への急速な普及につながるという意見もある。
米国時間23日の大統領選挙キャンペーンで、民主党John Kerry大統領候補は無線ブロードバンドを絶賛し、韓国のような他の先進諸国に遅れをとって、活気のない米国のインターネット構造の現状を修正するものと主張した。だが、この技術はまだ試験の初期段階にあり、実現すると言われていることの多くは、現実のアプリケーションとしてまだ実証されていない。
24日にIEEEに承認されたことを受け、これまで誇大な宣伝に終始していたWiMAXはやっと能力を実証する機会を得た。
「(WiMAX製品の)技術的な土台に関して合意を得た。(無線ブロードバンドアクセスの)マス市場での採用と低価格サービスにつながる相互運用性を持つためには、合意は不可欠だ」と調査会社Farpoint GroupのアナリストCraig Mathiasは語る。
ラスト・ワン・マイルを無線で
WiMAXは「Worldwide Interoperability for Microwave Access」の略で、「ラスト・ワン・マイル」を実現する最新かつ(これまでのところ)最有望な無線ブロードバンド技術だ。これまで地方や遠隔地にDSLやケーブルを埋め込んでブロードバンド接続を提供することは、技術的、物理的、そして経済的にも難しかった。通信事業者は、WiMAXによりこのような地域にブロードバンドサービスを提供できると見ている。機器メーカーによると、人口が密集する都市部では、WiMAX製品の利用により需要が過度になっているブロードバンドネットワークからトラフィックを移行できるため、負荷軽減に役立つという。
WiMAXは、家庭やオフィスの隅々まで容易にインターネットアクセスを提供する手段として既に承認されているWi-Fiなど、短距離無線通信用の標準規格とも連携する予定だ。WiMAX支持者の最終的な望みは、EvDO(Evolution Data Only)のような移動体データ通信技術に似たモバイル無線インターネットサービスへと、この標準を進化させることだ。
WiMAXを強力に支援しているチップメーカーIntelでWiMAXキャンペーンマネージャーを務めるJoe Englishは、「WiMAXは、実装という点で企業に重要な強みを与える。なぜなら、新しいインフラを構築する必要がない・・・つまりネットワークの構築につきものの道路を掘り返す工事が必要ないからだ」と述べる。
Wi-Fiは、手頃な価格設定のおかげで、家庭内の無線ネットワークとして広く普及したが、WiMAX製品の登場により、これと同じ原理でブロードバンド通信事業者や消費者はWiMAX関連支出を軽減できる。
これまではAlvarion、Redline Communications、Wi-LANなどの企業が、ばらばらにWiMAXの開発作業を進めてきたが、24日のIEEE承認を受けて、この作業に一定のまとまりが出てくることだろう。WiMAX製品は802.16-2004標準をサポートすることになり、それぞれに相互運用性を持つことになる。業界団体のWiMAX Forumは、Wi-Fi AllianceがWiFi製品に対して行っているのと同じように、WiMAX製品に対する相互運用性のテストおよび認定を行う。これにより、標準サポート機器の市場が形成されることになる。
標準規格が固まる前の802.16-2004仕様に準拠した製品はすでに市場に投入されている。英通信事業者のBTは、同仕様のドラフトをベースとしたAlvarion製の機器を使って無線ブロードバンドサービスの試験を英国で実施中だ。
Intelは今月、WiMAX機器を共同開発することでProximと提携したことを発表しており、来年はじめにもベースステーションが提供される予定だ。
アナリストの予測では、加入者の家庭内に設置するステーションの初期料金は最大300ドル程度になるという。ベースステーションは5000ドル程度から提供される見込みだが、ものによっては10万ドルにもなるという。場合によっては、ケーブル通信のセットトップボックスのように、加入者向けステーションを通信事業者がサービスプランの一部として加入者にリースすることも考えられる。
アナリストによると、最初のWiMAX認定製品は、遠隔地へのサービス拡大と都市部でのトラフィック軽減を図る通信事業者向けのベースステーションとなるだろうという。ベースステーションは、データを送受信するという点で携帯電話の基地局と同じようなものだ。WiMAXのベースステーションは有線と接続するか他のベースステーションとリンクすることにより、サービスエリアを形成する。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」