チップメーカーのTexas Instrumentsが新たなDSL技術を開発した。この技術は電話会社各社にとって、ビデオや音声などのアプリケーションを扱える高速サービスを展開する上で、コスト効率の良い選択肢になるという。
Texas Instrumentsが14日(米国時間)に発表したUni-DSL(UDSL)では、DSL線技術の帯域幅が、音声やデータだけでなく、ハイビジョン(HDTV)信号などの高度ビデオサービスも提供できるレベルにまで拡大される。
Uni-DSL技術は、ADSLやVDSLなどすでに標準化されている既存の各種DSL技術とも下位互換性があり、通信キャリア各社はこの技術によって、帯域幅を200Mbpsまで向上できるとTexas InstrumentsのDSL技術担当最高技術責任者(CTO)Pete Chowは述べている。
電話会社がケーブル会社との競争に追いつこうとするなかで、DSLの普及は急ピッチで拡大している。現在、DSL顧客の大半は、音声やビデオアプリケーションではなくウェブサーフィンのためにこのサービスを利用している。しかし、電話会社がケーブル会社と競争するためには、ブロードバンド接続で音声やビデオなどのアプリケーションをサポートする新しい高速サービスを提供していかねばならなくなるだろう。そのためには、電話会社のインフラをアップグレードする必要がある。
現在のDSLサービスが抱える最も大きな問題は、距離とスピードにある。DSL機器がサービスを提供している電話局から契約者が離れれば離れるほど、データ転送速度が遅くなるのだ。
DSL Forumによると、全世界のDSL契約者は約7340万件だという。そのほとんどが利用しているのはADSLサービスだが、この場合電話局から距離が5〜6kmまでの区域に8Mbpsの下り帯域幅を提供するものが典型的だ。
一方、VDSLという新しいタイプのDSLは最大52Mbpsと、ADSLよりはるかに高速だ。しかし信号を転送できる距離がわずか800m以内に限られるため、高層マンションなどの人口過密地域でないとあまり役に立たない。VDSLサービスはアジアの大都市で人気だが、米国の大半の市場では現実的な選択肢ではない。
Chowによると、UDSLはADSLとVDSLの中間にあたるものだという。UDSLはADSLとVDSL両標準と互換性があることから、必要条件は両技術と同じで、たとえば電話局から1km以上離れた地域では、ADSLのようなサービスをADSLのデータ転送率で提供する。その一方で、至近距離では、VDSLと同等もしくはそれ以上の転送率で、VDSLのようなサービスを提供できる。UDSLサービスなら、場合によっては最大200Mbpsの帯域幅を提供できることもあるという。これは現行のVDSLサービスで提供される最大帯域幅の4倍に相当する。
通信キャリアは、UDSL機材を持っていれば、同じ機材でADSLやVDSL標準をベースにした柔軟なサービスを提供できる、とChowは述べている。現状では、キャリアがADSLとVDSLを両方提供しようとすると、別々の機材を購入しなければならない。同じネットワーク製品でADSLとVDSLサービスが提供できるようになれば、通信キャリアにとってはコスト的に高速データ転送サービスを提供しやすくなる可能性がある。
Texas Instrumentsでは、新チップのサンプルを来年後半には出荷できると予想している。同社のこのチップを採用した第1世代の製品が登場するのは2006年になりそうだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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