KDDIに続きNTTドコモが第3世代携帯電話(3G)の定額制に向けて動き始めたことが話題となっている。しかし、4社しかプレイヤーのいない携帯電話業界では料金の下げ止まりが起きているのも事実だ。この状況を打破しようと、新たな3G規格を利用して高速低料金の通信サービスを提供しようとする動きが出てきた。
ソフトバンクBB、マルチメディア総合研究所、イー・アクセスの3社は3月18日、モバイルブロードバンド協会が開催したMBAフォーラムにおいて講演を行い、TD-CDMA方式などの新規格を使った新たな携帯電話事業の取り組みについて紹介した。
左からソフトバンクBBの宮川潤一氏、マルチメディア総合研究所の信國謙司氏、イー・アクセスの諸橋知雄氏 |
TD-CDMA方式は2003年に国内でも実験局の設置が許可され、各社が実験を進めている。現在サービスが提供されているW-CDMAやCDMA2000が上下回線で異なる周波数を利用しているのに対し、TD-CDMA方式は上下回線で同じ周波数を使い、時分割して伝送する点が特徴だ。これによりデータ通信のような非対称通信を効率よく伝送できると言われている。国内では2010〜2025MHzの周波数帯が利用されておらず、これを5MHzずつ3事業者に割り当てる方向で調整が続いている。
携帯電話でも価格破壊を起こす--ソフトバンクBB
ソフトバンクBBはTD-CDMA方式を利用したIP携帯電話と、ADSLサービスや無線LANサービスを組み合わせ、家庭内やオフィスだけでなく、屋外でもネットワークにつながる環境を提供したい考えだ。バックボーンにはADSLで利用している既存インフラを利用することでコストを下げる。これにより、「料金が下げ止まっている日本の携帯電話市場を、世界標準並みにしたい」(ソフトバンクBB BBフォン事業本部 本部長の宮川潤一氏)と意気込む。情報通信総合研究所の調査によると、日本の通信事業者が得ている加入者当たりの収入は、米国の2倍近くになるという。
ソフトバンクBBでは現在、練馬・荻窪地区に実験局を設置し、使用機材の検証やスループット値の確認などを行っている。まずはデータ通信のみだが、今後は音声通信の実現に向けても検証を行っていく方針。宮川氏によると、9月には音声端末のプロトタイプが完成する見込みだという。
将来的な事業展開としては、現在すでに提供しているIP電話サービスのBBフォンやとIP携帯電話の融合サービスや、無線LANも利用できるデュアル端末の開発を行っていく。また、非接触ICを利用した電子マネーサービスやテレマティクスも視野に入れているとした。
共同でインフラを構築しコスト削減を--マルチメディア総研
マルチメディア総合研究所は、TD-CDMA技術を持つ米IPWirelessとパートナー契約を結び、アイピーモバイルを設立。国内では最も早い2003年4月に実験免許を取得し、現在はNTTコミュニケーションズと共同で実験を進めている。実験局は千代田区平河町、丸の内、港区西新橋の3カ所で、実用化の検討に向けデータを収集している段階だ。今後は高速移動時の実験や遅延特性などについて評価を進めていきたいとマルチメディア総合研究所 取締役の信國謙司氏は言う。
信國氏は、インフラのコストダウンを図るべく複数のキャリアが共同でインフラを構築し、通信サービスを別個に提供することを提案した。これは同時期に複数の事業者がインフラ構築する場合に有効となる。スウェーデンやオランダなどで実施されているほか、米国でもSprint PCSとAT&T Wirelessが基地局の共同建設や共有を行うと発表している。
下り7Mbpsの新方式を採用--イー・アクセス
ソフトバンクBBとマルチメディア総研がTD-CDMA方式を利用しているのに対し、新しいTD-SCDMA(MC)方式を採用しているのがイー・アクセスだ。TD-SCDMA(MC)は米Navini Networksが開発した方式で、TD-CDMAの2.6倍のスループットが出せる点が特徴。TD-CDMAの下りスループットの平均が2.6Mbpsであるのに対し、TD-SCDMA(MC)では7.0Mbpsの速度が出るという。世界では約30カ国で商用展開や実験が行われているが、国内ではまだ認可が下りていない。
イー・アクセス 新規事業企画本部 副本部長兼技術部部長の諸橋知雄氏は、固定通信のダイアルアップとADSLユーザーを比較した場合、1カ月当たりに利用するデータ通信量がADSLでは230倍になると紹介。携帯電話ではPDCと高速モバイルユーザーの通信量の差が約3倍であることから、大きな潜在需要があるとみている。
イー・アクセスでは主要都市のバックボーンを光ファイバ化しており、全国の約95%を自営IP網化しているという。IP携帯電話でもこのバックボーンを利用する考えだ。さらにイー・アクセスでは提携ISPや独自の販売チャネルを保有しており、これが将来の新たなサービスにも活用できると話す。提供サービスについても、定額もしくは準定額制で、ニーズに応じてVoIPによる音声サービスを提供していきたいとした。
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