サンフランシスコのダウンタウンにあるMcDonald'sの店舗には、店内に設置したアクセスポイントからワイヤレスでウェブを利用できるとうたう看板が掲げられ、顧客を呼び込もうとしている。だが、最近ある水曜日の昼休みに訪ねてみたところ、このサービスを利用している客はひとりもいなかった。
実際、店内のあちらこちらに、合わせて20数名の客の姿が見受けられたが、そのなかにノートPCや無線機能付きのPDAを手にした者はいないようだった。新聞を眺めながらフライドポテトやハンバーガーをのせたトレイに手を伸ばす客が何人かいた。ほかには、静かに話をしながら食事をしている客もいれば、窓の外を眺めながら黙々と口を動かす者もいた。
Market StreetとSecond Streetの交差点の近くにあるこの店では、これが典型的な光景だと、同店舗のスーパーバイザーであるMargie deGrootは説明する。この店は、昨年McDonald'sが米国内でいち早くWi-Fiアクセスサービスを提供した店舗のひとつに選ばれた。だが、「オフィスに戻ればコンピュータを使えるのに、どうしてわざわざここでネットを使おうとする客がいるだろうか」と同氏は述べている。
こうした疑問を投げかけるのは、同氏だけではない。いわゆるWi-Fiをつかったワイヤレスブロードバンド技術はコンピュータユーザーの間で急速に人気が高まっており、外出先からネットに接続することがますます増えているモバイルインターネット利用者向けにサービスを提供する新たな業界の成長に火を付けた。しかし、このビジネスは誕生してからまだ日が浅く、各社とも顧客を惹きつけるためにはどんな手があるのか、あるいはそもそもそのような手が存在するのかについて、手探りを続けている状態だ。
Wi-Fiプロバイダー各社は、アクセスポイントを設置できる場所として、ホテル、空港、公衆電話ボックス、レストランといった施設を次々とターゲットにしてきた。Starbucksや、デリカテッセンのチェーン店を展開するSchlotskyではすでに、来店者の増加や滞在時間の延長による注文の増加を狙い、商用Wi-Fiサービスを展開し、まずまずの滑り出しを見せていると報告している。また先週には、大手書籍チェーンのBarnes & Nobleが、Cometa Networksと協力して、今年9月までに約650店舗にホットスポットを設置すると発表している。
McDonald'sでは2003年7月より、ホットスポットプロバイダー3社と提携してWi-Fiサービスを試験導入している。同社は今月中にも、競合する3社のなかから、長期パートナーとして1社を選び、またこのサービスの料金体系や提供店舗についての発表を行うと見られている。
McDonald'sがホットスポット市場に参入し、このサービスを全米の1万3000店舗で展開すれば、一気にこの業界全体を追い越すスケールを持つ可能性がある。また、Cometa Networks、東芝の米国法人が運営するSurfHere、そしてWayportという3社のホットスポットプロバイダーがMcDonald'sとの長期契約を狙って現在しのぎを削っているが、この契約を勝ち取ったプロバイダーでは、今後の見通しが劇的に改善できるかもしれない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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