UTStarcom最高経営責任者(CEO)兼社長のホン・リャン・ルー氏は2月23日、都内で開かれたブロードバンド推進協議会において講演し、中国のブロードバンド市場の現状について説明した。
UTStarcomは通信事業者向けにネットワーク回線機器の開発、製造、販売を行っている企業。売上の85%を中国向けの製品が占めており、中国の通信市場拡大に伴って業績を急拡大させている。2000年の売上高が3億6860万ドルだったのに対し、2003年は19億6430万ドルとなった。「中国の市場があってこそ、ここまで伸びてきた」(ルー氏)
UTStarcom代表取締役会長のホン・リャン・ルー氏 | |
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ではなぜ、ルー氏は中国市場に目を付けることができたのか。ルー氏は言う。「1990年頃に北京を訪れたとき、中国の電話普及率は約1%だった。電話番号は5ケタしかなく、電話を百回くらいかけてやっとつながるという状況だった。中国の電話需要は大きく、これしかないと思った」
同氏の予想通り、中国市場は急拡大している。ルー氏によれば、中国における2003年の固定回線の利用者純増数は4900万件、携帯電話(PASを除く)が6200万件、インターネットが2100万件という。また、ブロードバンドの利用者総数は2003年末で1158万件とのことだ。
ブロードバンドについては企業や官公庁での利用が多く、家庭で接続しているユーザーは2002年6月時点で全体の6%しかいなかった。しかし、料金の低廉化に伴って急激に利用者数が増えているとルー氏は話す。「1カ月に100万人増というペースで増えている。2005年にはこのペースが1カ月200万人になると言われている」(ルー氏)
ブロードバンド接続の利用料は事業者によって異なるが、加入料を無料にするところも増えてきており、月額利用料は9.6〜24ドル程度。ルー氏は、月額利用料が10ドル以下になれば市場はさらに伸びると予測する。なお、ルー氏によると中国版PHSと呼ばれるPASのARPUが6〜8ドル、携帯電話が12ドル程度という。
中国市場拡大の機運に乗ったUTStarcomだが、決してその地位が安泰というわけではない。「中国は大きな市場だが、世界一厳しい市場でもある。中国で生き残り、利益を出せる体制を作った企業は世界にも通じるだろう。逆に、中国で生存できない企業が、長い目で見たときに他の国でも生き残れるかは疑問だ」(ルー氏)
UTStarcomでは今後、ストリーミング配信などを想定したハードウェア、ソフトウェアの開発を行っていくという。ルー氏は現在開発中の新たな製品として、ADSL、VoIP、無線LANのほか、PHSも利用できるモデム「Q-BOX」や、6Mbpsのストリーミング配信が可能なメディアコンソールなどを紹介した。
会場では、UTStarcomがPASと第3世代携帯電話(3G)の両方に投資していることについて、PASはいずれ第3世代携帯電話(3G)に取って代わられるのではないかとの質問がなされた。これに対しルー氏は、「3Gの端末は高すぎて、PASユーザーはついていけない。3Gの料金がPAS並みに安くなれば大変な事態になるが、それは不可能だ。UTStarcom ではPASと3Gの両方を扱って、全体的な売上が伸びるという発想で取り組んでいる」と同社の姿勢を説明した。
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