「民間主導へと変貌する米国の電波政策」:ブロードバンド時代の制度設計とは

 12月4日、経済産業研究所(RIETI)が主催する政策シンポジウム『ブロードバンド時代の制度設計II』が赤坂で開催され、ブロードバンド時代における「通信の規制改革」や「電波の開放」をテーマに議論が白熱した。

 RFID技術や無線インターネット等への応用が期待され、ますます需要が高まる無線通信技術だが、免許によって事業者へ帯域を割り当てる現在の方式は需給バランスが極めて悪く、世界的に周波数利用効率の改善が求められている。

 RIETI上席研究員の池田信夫氏は、周波数の割り当て方式に関して「大きく3つの議論が混在している」と現状を整理する。その3つの議論とは、政府主導のコマンド・アンド・コントロール(統制管理)により帯域免許を配分する方式、そして市場メカニズムによって所有権を割り当てる方式、さらには免許不要の公共財(コモンズ)として開放する方式である。池田氏によれば「これらの考え方は相互に排他的なものではなく、どのように組み合わせていくか」が重要であるという。

FCC電気通信政策局長のロバート・ペッパー氏

 現在、世界の電波政策は政府によるコマンド・アンド・コントロールが主流だが、一方でその非効率的な利用方法が問題視されている。そのため、いかにして効率的な制度を確立するかが議論の焦点となった。

 池田氏らと共に無線インターネットの普及に向けた電波政策の問題点を検討する電波探検隊を組織する風雲友 代表取締役社長の田中良拓氏は「FCC(米国連邦通信委員会)は制度を抜本的に考え直して新たな案を出した」とFCCの取り組みを紹介した。FCCのSPTF(Spectrum Policy Task Force:周波数政策専門調査会)は昨年まとめた報告書の中で「従来のコマンド・アンド・コントロールはやめるべき」として、市場メカニズムで電波利用権を割り当てる方式と、電波をコモンズとして開放する方式の双方をバランス良く取り入れることを提言している。

 今回のセッションでも、FCC電気通信政策局長のロバート・ペッパー氏は電波オークションに有効性を感じるかとの問いかけに対して「投資のリスクをとる者へ割り当てるのが最も効率的な方法」との考え方を示し、積極的な市場メカニズムの導入を主張した。この点において、政府主導で周波数再配分を目指す日本の総務省とは見解の差が浮き彫りとなった格好だ。

 また、ペッパー氏は「将来的にはFCCによるコマンド・アンド・コントロールの適用範囲は電波帯域全体の10%〜20%程度になるだろう」とも語った。これには会場からも驚きの声が上がる。周波数の割り当てには多くの利権が絡み合い、政治的な背景からFCCはどの方式をどの割合で導入するかについてこれまで深い議論を避けてきた。現役のFCC高官が公的の場で具体的な数値目標を掲げるのはこれが初めてとみられる。

 セッション終了後、CNET Japanのインタビューに対し池田信夫氏は「(ペッパー氏の発言は)現在の電波政策を行政主導から民間主導へと根本的に変えるもの」であると評価し「今日はこれを聞いただけでも非常に意味があった」と強い口調で語った。

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