「2011年までに、地上テレビ放送はすべてデジタル放送へと移行する」。これはe-Japan戦略の政策の一部である。今年12月より3大都市圏(関東・近畿・中京)で地上デジタル放送が開始されるが、これで放送のデジタル化に向けた取り組みの第一歩が始まることになる。デジタル化が進む放送メディアの現状と今後の政策について、総務省情報通信政策局放送政策課長の福岡徹氏がデジタル家電フォーラムにて語った。
地上テレビ放送がデジタル化されることで、一体何が変わるのだろう。映像や音声が高品質になるということは一般にも知れ渡っているが、データ放送が充実し、ニュースや天気予報がいつでも視聴可能となったり、高齢者や障害者向けのサービスとしてセリフの速度が自由に調整できるといったサービスも可能となる。さらに、アナログ方式と比較するとデジタル放送では使用周波数を大幅に節減することが可能で、移動体通信など新しい周波数のニーズに対応することができる。また福岡氏は、国内のほぼ全世帯に普及しているテレビがデジタル化することで、IT社会の基盤ができあがるとし、この基盤作りの経済効果として、「受信機や放送設備などの需要により、今後10年間で40兆円、関連産業への波及効果も含めると、212兆円もの経済効果がある」という。
「経済効果は212兆円」と語る、総務省情報通信政策局放送政策課長の福岡徹氏 | |
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地上デジタル放送における今後の課題としては、「まずデジタル放送を着実に拡大させることだ」と福岡氏。今年12月のデジタル放送開始時点でカバーされる世帯数は約1200万世帯で、現在地上放送を受信している約4800万世帯の半分にも満たない。これを2004年末には1700万世帯、2005年には2300万世帯と、アナログ放送受信世帯の約半数にまで拡大させることを目標としている。また、デジタル放送の開始にあたって、現行のアナログ周波数を変更しなくてはならない地域があるため、「これら地域の周波数対策をまず早急に進める」としている。
福岡氏は、地上デジタル放送の周知広報も課題だとしている。総務省の調べによると、今年地上デジタル放送が開始されることを知っているとしたのは、調査対象となった2000人のうち44.6%で、半数にも達していない(本年度3月に18歳から60歳代の男女を対象に調査を実施)。2011年にアナログ放送が終了し、完全なデジタル化へ移行することを知っている割合はさらに低く、33.6%となっている。このことについて福岡氏は、「今後NHKや民放が一体となった統一キャッチコピーを策定し、様々な周知施策を展開する予定」と述べた。
実際の普及に向けては、地上デジタル放送用受信機(一体型受信機、セットトップボックス、地上デジタルテレビ受信機能付きパソコンなど)の普及目標台数を「2011年夏のアナログ放送停止までに1億台」としているが、福岡氏は「視聴者がどの受信機を選べばいいのか、悩んでしまう可能性がある。この点をいかに改善するか、業界全体で取り組みを強化することが大切だ」と語った。
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