デジタル技術を駆使した学習教材の提供を目指し、産学連携で設立準備が進められてきた「デジタル教科書教材協議会(DiTT)」が7月27日正式に発足し、同日都内にてシンポジウムが開催された。同協議会の会員は70社でスタート。ソフトバンクやマイクロソフト、NTTドコモ、NEC、ソニー、アップルなどIT系企業のほか、出版社や新聞社、広告会社やシンクタンクまで、幅広い業種から参加している。
会長に就任した三菱総合研究所理事長で元東京大学総長の小宮山宏氏は、あいさつにおいて「扱う知識量が爆発的に増えている。これは企業も社会も同じで、教育に影響を及ぼさないわけがない。変化のスピードと量が速すぎ、教育者もついていけない状況がある。すべてが解決できるわけではないが、ITの活用によりかなりの部分を解決できる」として、デジタル教科書教材を推進する意義を説明した。
総務大臣の原口一博氏は祝辞のなかで、「現在の教科書を電子化したものをデジタル教科書とはとらえていない。日本の停滞を解消するための大きな変化のひとつだ」とした上で、2010年に総務省が10カ所のフィーチャーズスクールをつくる計画を明らかにした。
続いて催された講演では、最初にマイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏が登壇。樋口氏は、近年の日本を取り巻く停滞感について言及したうえで、「国の競争力を増すためには、国の戦略とマッチする人材、実社会で機動力を発揮できる人材の育成が必要」と、日本の教育環境に対する見解を述べた。さらに英語および第2外国語、ICTといった基礎スキルにくわえ、実践的なスキルを身につけるためにはデジタル技術の活用が有効だとして、デジタル教科書の有用性を主張した。
続いて登壇したソフトバンク代取締役社長の孫正義氏は、冒頭から「教育の議論なくして日本の将来はない」として、現在の教育制度に対する批判を展開。「国際競争力低下を食い止めなければ、取り返しがつかなくなる。医療費は増える一方、税金は減る一方。このままでは失われた50年になってしまう」と危機感をあらわにしたうえで、国際競争力の回復が急務であると述べた。そのためには、30年後に社会の中核となる子どもたちに「30年後に役立つ知識を教えるべき」だとし、教育改革の必要性を強く主張した。
孫氏は紙の教科書では情報量が絶対的に足りないとしたうえで、「デジタル教科書へのシフトは必然であり早急に実証実験を開始すべき」という持論を展開。端末については、「日本の全学生1800万人、教員200万人の計2000万人に無償で端末を配布すべき。子供手当から280円を差し引いた額を費用とすれば十分に対応できる」とし、5年を目処とした計画の実現を訴えた。
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