「2011年度は『We're all in』というスローガンのもと、とにかくクラウドに賭ける」――マイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏は、7月6日に開催された2011年度経営方針記者会見で次のように語った。
リーマンショックに端を発する不況のあおりを受け、米国本社でも創業以来となる大規模な人員削減を実施することになったマイクロソフト。樋口氏は2010年度を振り返り、「我々は“リセットピリオド”と呼んでいる。組織の再活性化、効率化を図った」と説明する。
しかしそんな厳しい年度でも、さまざまな成果があったという。2009年10月に一般発売したオペレーティングシステム(OS)「Windows 7」の売れ行きは好調で、「過去最高のペースで普及している」(樋口氏)とアピールする。今年度には法人への導入も本格化するが、すでに約5360の団体や企業が導入表明をしている状態だという。また、6月に一般発売した「Microsoft Office 2010」も、「(前バージョンである)Office 2007の2倍のスピードで売れている。最初の1週間でOffice 2007の1カ月分の販売数になった」(樋口氏)と説明する。
クラウドサービスを本格化したのも2010年度だ。企業向けオンラインサービスの「Microsoft Online Services」については、1年間でパートナー数が約10倍となる350超まで拡大。ユーザー数でも国内で25万を超えた。「全世界のユーザー数は4000万。企業の規模の大小問わず興味を持ってもらっている」(樋口氏)。またPaaSサービス「Windows Azure」についても「50以上のパートナーが採用しており、『オンプレミス(自社でハード、ソフトウェアなどを用意すること)をそのままクラウド展開できる』と評価されている」(樋口氏)
ソリューションビジネスの分野においては、体験型ブリーフィングや技術支援を手掛ける「マイクロソフト大手町テクノロジーセンター」を2009年10月に開設。さらには生産性向上ソリューションやデータベースソリューション、仮想化ソリューションなどで協業を進めてきたほか、富士通やサイボウズ、日立製作所らとの製品連携も進めてきた。
社長就任から3年を迎える樋口氏は、これまでを振り返り「部署間の壁を越えた“ワンチームのスピリット”を持ち、四半期ごとの目標を達成できるようにと考え組織改革をやってきた」と語る。そして7月から始まった2011年度については「四半期ごとの目標達成に加え、中長期視点で日本市場に向けた戦略を立てていく」と説明する。
2011年度、マイクロソフトが最も注力するのがクラウドビジネスの強化だ。「自社でオンプレミスのビジネスを進めてきて自己否定的でもあるが、トレンドをとらえてリソースを大きくクラウドにシフトしていく」(樋口氏)
米MicrosoftのCEOであるSteve Ballmer氏が3月に「70%の社員が何らかの形でクラウド関連事業に従事する」という旨の発言をしているが、国内では90%の社員がクラウド関連事業に従事する体制を作る。すでに法人向けに100名規模のクラウド専任部隊を設置しており、この数は順次拡大していく予定だという。さらに、日本のユーザーが満足できる品質のサポート体制を確立していく。企業とのパートナーシップも引き続き強化していき、認定パートナーのクラウド対応についても、現在の約350社から2011年度内に1000社まで拡大。3年後には7000社にまで増やすとした。
そのほか、Windows Azureのボリュームライセンスも提供やOnline Servicesの「Business Productivity Online Suite(BPOS)」の新バージョン、CRMツールの「Dynamics CRM Online」、セキュリティサービス「Windows Intune」などの提供も予定する。
コンシューマー向けのオンラインサービスも強化する。直近では、7月13日に検索エンジン「bing」を正式版に移行する。また、年度内にはウェブブラウザInternet Explorerの最新版である「Internet Explorer 9」の提供も予定している。モーションセンサを使ったXbox 360用デバイス「Kinect」も年末には発売する予定。「まずはXboxからやるが、PCやビジネスユースでの展開も考えていく。すでに多くのメーカーが参入を表明しており、年末商戦に向けていく」(樋口氏)
マイクロソフトは2011年2月で設立25周年を迎える。これに合わせて2月1日付けで本社オフィスを品川のグランドセントラルタワーに移転する。それと同時に、社名を「日本マイクロソフト株式会社」に変更する。「グローバル企業だが、日本で信頼され、日本に貢献する、ローカルでも正しいことをやっていくと言う気持ちをあらわした」(樋口氏)
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