米最高裁判所がソフトウェア特許の可能性を制限することを望む人は、米国時間6月28日の決定に失望するだろう。
最高裁判所は、特許出願者Bernard Bilski氏とRand Warsaw氏に不利な決定を下した(PDF)。両氏は1997年、投資のリスクヘッジプロセス、つまりある投資のリスクで別の投資のリスクを相殺するプロセスについての特許を取得しようと試みた。
しかし大多数の裁判官は、いわゆるビジネスモデル特許、そして場合によってはソフトウェア特許をも制限するような、より広範囲に及ぶ決定までは下さなかった。
Anthony Kennedy裁判官は、裁判所の大多数の意見を代表して次のように述べている。「この特許出願は、抽象的な概念に特許性がないという判例に基づいて却下できるものだ。したがって裁判所は、特許可能な『プロセス』に該当するものは何かをさらに定義する必要はない」
Kennedy裁判官は、連邦控訴裁判所が支持した、物理的でないプロセスのうち特許取得可能なものの種類を制限するという考えを支持しなかった。同裁判官は、そのような変更を行えば「ソフトウェア」や「リニアプログラミング、データ圧縮、デジタル信号の操作に基づく発明」の「特許性について不確実性が生じる」と記した上で、裁判所は28日の決定において、そういった技術のいずれについても対処するものではないと付け加えている。
ソフトウェア特許を支持する人々はこの決定を歓迎している。自由市場を提唱するProgress and Freedom Foundationの一員であるTom Sydnor氏は、この決定を「穏健で賢明な考え方」であり、ソフトウェアやビジネスモデルの特許取得を「禁止するという非現実的で一律的なルールを認めない」ものだと言い表している。
知的財産専門の弁護士でProskauer Patent Law Groupの共同代表者であるSteven Bauer氏は、「これは誰もが望んでいたような一律的な判断基準を示すものではない」と述べる。そうではなく、すべてのソフトウェア特許案件に新たな要素を追加するものであり、出願者にその出願内容が抽象的な概念ではないことを示すことが求められるようになるという。
この決定に、ソフトウェア特許に反対する人々は失望している。
Software Freedom Law Centerの会長であるEben Moglen氏は、声明で次のように述べている。「特許法はここ20年ほど、さまざまな問題が溢れかえった状態にあり、危険なほど混乱している。本日の決定の背景にある混乱と不確実性から見て、Bilski対Kappos訴訟に関連する問題は、多額の資金が費やされ多くの技術革新が阻害されたあげくに、やがてまた最高裁判所に持ち込まれることは必至だ」
控訴裁判所は、有形でないプロセスに関する特許は、いわゆる「機械または変換のテスト(machine-or-transformation test)」に合格した場合にのみ認められると述べていた。このテストは、「特定の機械または装置に関連付けられている」もの、または「特定の物を異なる状態または物に変換する」ものであれば特許性が認められると判断するものだ。しかし最高裁判所はこの考え方を支持せず、この「機械または変換のテスト」はプロセスの特許性を判断する際の唯一の手段とはいえない、と述べた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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