2010年に入り中国の深センにある巨大工場で自殺が相次いでいるFoxconnが、従業員の賃金を30%あげることが判明した。
Apple、Hewlett-Packard(HP)、Dell、ソニーといったメーカーのノートPCやモバイル機器をはじめとするハードウェアを製造する台湾のFoxconnは現地時間6月2日、賃上げは同社の中国にある全工場で直ちに実施されると発表した。
この賃上げは、Foxconnが中国の労働力不足への対応として当初に提示していた20%をさらに上回るものとなっている。AP通信によると、同社の中国工場の基本的な賃金は月130ドルほどだという。
AP通信の記事では、匿名のFoxconnの職員が、これにより労働者が長時間残業する必要性を感じなくなり、労働環境でのストレスが軽減されることを期待していると語っている。続けてこの職員は「離職率の低下や、生産性と製品の品質水準の向上にもつながるのではないか」と述べている。
2010年に入り、数十万人が働くFoxconnの中国深セン工場では10人の作業員が自殺しているほか、3人が職場で自殺未遂を起こしている。AP通信によると自殺の多くは建物からの飛び降りだという。自殺を試みた従業員の人数はさらに多い可能性があるとの一部報道もある。
Foxconnを所有する鴻海精密工業は、工場の作業員にストレスが高い環境での長時間労働を低賃金で強要したとして非難されている。同社はこうした疑惑を否定しているが、一方で相次ぐ自殺をさらに詳しく報道しようというメディアの動きには強硬に抵抗している。
しかし、工場での労働条件に関してメディアの注目と懸念が高まるなか、Foxconnの大手顧客の数社が声を上げはじめた。Apple、Dell、HPは先週、工場の状況を調査し、Foxconnの幹部と直接話をすると発表した。また、ソニーとNokiaも状況調査を行うと話している。
Appleの最高経営責任者(CEO)であるSteve Jobs氏は米国時間6月1日夜に行われたD: All Things Digitalカンファレンスでのインタビューで、この自殺騒動に言及した。Foxconnは「iPhone」「iPod」および「MacBook」の製造を担当している。Jobs氏は、Appleは同社のサプライヤーをチェックして労働条件の評価を行っていると話した上で、Foxconnは労働者を搾取する劣悪な仕事場ではなく工場であり、それも食堂、映画館、医療ケアがそろったかなり条件のいい工場だと述べた。
賃上げのほかにFoxconnは、建物周辺に飛び降りを予防する転落防止ネットを設置し、カウンセラーの数を増やした。また、精神的なトラブルの兆候を従業員同士で察知できるよう、作業員を50人からなるチームに組織したという。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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