デジタル化の進展など、著作権をめぐる昨今の情勢に鑑み、現行の法制度のあり方の見直しを議論する、文化庁文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の2010年度第5回会合が5月27日、開催された。
前回までの会合では、写真の映り込みをはじめとして、教育や研究のための利用、検索エンジンのキャッシュ作成など、過度に権利者の利益を侵害しない範囲での著作物の複製や再使用について、権利者の承諾がなくても利用を認める“権利制限の一般規定”について、前年度から議論してきた同委員会。5月25日付けで取りまとめられた中間報告書では、一般規定を今後、導入する方針が打ち出された。
これを受け、今回の会合からは、議題を新たに「『公文書等の管理に関する法律』に関する権利制限」と設定。2009年7月1日に公布され、以降2年以内に施行することが定められた「公文書等の管理に関する法律(公文書管理法)」の運用にあたり、著作権法との調整が必要な検討事項について、同法を所管する内閣府からの提案に基づき、話し合いが進められる。
公文書管理法は、国や独立行政法人などの活動や歴史的事実を記録した公文書が、国民共有の知的資源として利活用されることを目的に、適切な管理や保存がなされるよう規定を法的に明文化したもの。従来、行政機関や独立行政法人で個別に管理、運用していた公文書を、一定の条件下で国立公文書館へ移管することが義務付けられるほか、行政機関以外の国の機関の文書についても、当該機関と内閣総理大臣との協議による定めに基づいて、国立公文書館などへの移管が可能となる。
さらに、国立公文書館などへ移管された特定歴史公文書について、館長は永久保存する義務を負うことになる。また、国民から利用請求があった場合には、複写物の交付などによりこれに応じなければならないことが規定されている。
しかし、公文書には著作権を有する著作物が含まれるものもある。したがって、こうした文書に対して利用請求があった場合には、著作権法との兼ね合いで、運用上、問題が生じることも考えられる。具体的には、複製物を交付する場合や、録音および録画された著作物を含む公文書を再生する場合、ほかの記録媒体へコピーして保存するといった場合に、氏名表示件や複製権、公表権といった著作権者の権利に抵触する可能性があるとされる。
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