大賞を受賞した伊藤忠テクノソリューションズは、原田一樹氏、吉田生氏、山岸将之氏、北畠龍司氏の4人チーム。開発したサービス「Team Keeper」は、昨今オフィスのコミュニケーションにチャットサービスが活用されていることを背景に、企業向けチャットサービス「Slack」のバックグラウンドにWatsonを組み込み、社内コミュニケーションで生まれるさまざまな課題を解決することを目指したという。
プレゼンテーションした原田氏は、社内チャットで生まれるトラブル例として、「(業務上わからないことを聞いた)質問が無視されてイライラする」「知識が俗人化して、質問しても回答できる人がいないと回答をすぐに得られない場合がある」「同じ質問が繰り返されてストレスが溜まる」といったケースを紹介。こうした課題を解決するために、Team Keeperはオフィス内のチャットで生まれる業務上の質問と回答をWatsonに蓄積してナリッジベースを構築し、質問した際にはこのナリッジベースが自動的に回答を返すのだという。
たとえば、チャット上でWatsonのBotを宛先として質問をすると、ナリッジベースに回答があれば自動的に返し、その回答が的確かどうかを質問者が評価することが可能。もし回答がない場合には社内に回答を呼びかけ、誰かが回答をすれば、それはまたナリッジベースに蓄積される仕組みだ。また質問はメールでも可能で、特定のアドレスに質問を送ると、10秒程度でWatsonのBotから回答が送られてくる。
原田氏によると、Watsonに知識の蓄積がない初期段階や、Q&Aをまとめて学習させたい場合については、CSV形式でナリッジをWatsonに読み込ませる「ナリッジインポート」を実装しており、企業の導入をサポートするとのこと。ビジネスチャットの市場拡大に合わせて、競合サービス不在という先行優位性と、質問への対応でかかる人的コストの削減といった価値を武器に、ユーザー企業を獲得していきたい考えだ。また今後は、対応するチャットサービスの拡大や社内外で発生する問合せメールへの対応にTeam Keeperを活用するといった応用も展開していきたいとしている。
大賞の受賞理由について審査員の日本IBM吉崎氏は、「各社とも評価は僅差だったが、Team Keeperは実装レベルや完成度の高さで抜きん出ていた。(受賞した)チームは過去にもIBMのハッカソンで優勝しており、さすがという印象だった」とコメント。
一方、原田氏は今後の実用化に向けて「上長の判断次第。(ソフトバンク代表の)孫さんなら“やりましょう”と言ってくれるのですが」と語ると、会場でプレゼンを聴いていた原田氏の上司は、その場で「やりましょう!」と宣言。それを受けて、「今回のハッカソンを通じて、課題や気づきも多く得られました。まずは無償でもいいから導入してもらって、実際の利用シーンにおける具体的な課題を探っていきたい」と今後に向けた抱負を語った。
大賞以外のチームにはそれぞれ部門賞が贈られた。特別賞を受賞したウィルウェイは、株主総会の質疑応答で株主から寄せられる質問をWatsonの音声認識APIでテキスト化して要約を解析、データベースに蓄積されたFAQの中から適切な回答を議長に提示するシステムを考案。弁護士ドットコムは、ウェブサイトの検索ボックスに質問の文章を入力すると、Watsonが質問内容を解析して関連性の高いコンテンツを提案する仕組みを考案してIBM賞を受賞した。
また、ソフトバンク賞を受賞したAHACRAFTは、社員の業務メールをWatsonによって解析してストレスチェックをし、社員のメンタルヘルス支援をサポートするサービスを考案。同じくソフトバンク賞を受賞したTISは、災害発生時に役所に寄せられる通報の内容をWatsonが解析し、深刻度の判断や必要な対策の提案をする官公庁向けのツールを考案した。
ハッカソンを終えて、審査員であるNewsPicks編集長の佐々木紀彦氏は、「将来的には、WatsonにNewsPicksの“ピッカー”になってもらえないか。今度のハッカソンではアイデアを考えるチャレンジャーとして参加したい」とコメント。同じく審査員のBASE藤川氏は、「Watsonのさまざまな可能性を見ることができた。私たちの身近なものを簡単に拡張できるというWatsonの可能性の一端を見ることができたのが、今回のハッカソンの一番の成果ではないか」と語った。
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