既報の通り、ソフトバンクは5月9日、オンライン決済サービスを提供する米PayPalと、合弁会社PayPal Japanを設立する計画を発表した。現在協議中だが、7月を目処に設立する見込み。
出資金額は20億円(2500万米ドル)で、両社がそれぞれ10億円(1250万米ドル)ずつ出資する。役員は両社3名ずつ計6名となり、CEOには元ヤフーCOOで現在はソフトバンクモバイル取締役常務執行役員の喜多埜裕明氏が就任するという。
同日の記者発表会で登壇したソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は、合弁会社について「日本の決済市場を変えるために作る会社」と表現し、ソフトバンクグループとPayPalグループの連携によって「最強の連合が誕生した」と喜びを語る。
PayPalの親会社である米eBayで社長 兼 最高経営責任者(CEO)を務めるジョン・ドナホー氏も、「今日はPayPalにとって非常に記念すべき日。PayPalの歴史の中で初めて50対50のジョイントベンチャーを設立する」とコメント。ソフトバンクが日本における最良のパートナーだと強調した。
合弁会社では、モバイル決済ソリューション「PayPal Here」を日本で展開していく。PayPal Hereは、アプリをインストールしたスマートフォン(iPhone/Android)のイヤホンジャックに専用のカードリーダーを装着することで、その場でクレジットカードやPayPalでの支払いが可能になるサービス。すでに米国、カナダ、香港、オーストラリアで導入されており、日本は5番目となる。
支払われた代金は決済後すぐに店舗側のPayPalアカウントに入金され、店舗側ではアプリを通してこうした入金状況を確認できる。またカードリーダーはカード情報を暗号化するため、安全に取引ができるとしている。クレジットカードは、Visaカード、MasterCard、American Expressに対応。デビットカードは、Visa デビットカード、MasterCard デビットカードに対応する。
孫氏は、日本では支払いの際に現金しか受け付けていない店舗が多いことから、米国や韓国などに比べてクレジットカード払いの比率が低い「カード決済後進国」だと指摘。店舗のクレジットカード対応が遅れている要因として(1)導入コストが10万円前後かかること、(2)回収期間が15~30日間であること、(3)決済手数料が5~8%であることを挙げる。
PayPal Hereであればこれらの課題を解決できるとし、これまでクレジットカード決済を受け付けることが難しかった中小店舗向けにPayPal Hereを積極的に訴求していくと意気込む。「日本の中小の小売店舗を活性化したい。ソフトバンクとペイパルの力を合わせることで、一気に日本の消費者のライフスタイル、日本の小売店のビジネスモデルを変える」(孫氏)
まずは、5月9日より一部の事業者向けにカードリーダーとiPhoneアプリの提供を開始。7月頃を目処に一般向けの提供を開始し、Androidアプリも提供する。カードリーダーの価格は約1200円(オープン価格)で、ソフトバンクグループの販売チャネルを通じて販売される予定。PayPal Hereの利用にあたり、カードリーダー以外の導入費用や月額費用は一切かからないが、決済ごとに5%の取引手数料が発生する。
「法人営業部隊で(カードリーダーを)徹底的に配りまくって一気に店舗数を100万件、200万件まで増やしていきたい」(孫氏)
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