広告収入によって運営する音楽サービスの先駆けとなったSpiralFrogが米国時間3月18日、静かに幕を閉じた。SpiralFrogのサイトは、太平洋夏時間3月18日午後4時ごろから何も表示されなくなった。
同社に近い筋がCNET Newsに語ったところによると、SpiralFrogは運営を停止し、資産は債権者に引き渡されたという。SpiralFrogは2008年、事業を継続するために担保付き約束手形を発行し、ヘッジファンド数社などから少なくとも900万ドルを借りていた。
SpiralFrogの関係者からは、今のところコメントは得られていない。
ニューヨークを拠点に2006年8月に起業したSpiralFrogは、サイトの運営費を広告売上でまかないながら無料の音楽をネットユーザーに提供することを目指し、大きな話題となった。The New York TimesやReuters、USA TODAYなどメディア各社は、同サイトがいつかAppleの「iTunes Store」を脅かす存在になる可能性について疑問を投げかけている。
一部には、SpiralFrogのビジネスモデルは違法なファイル共有の解決策になるという意見もあった。
しかし、このビジネスモデルはいまだに実証されていない。2009年に入って事業を停止した広告支援型のサービスは、SpiralFrogで2つ目だ。大学生を対象としたRuckusも事業を停止している。
広告支援型のサイトによって楽曲の売り上げは伸びるのか、それとも減るのか、大手レコード会社の幹部らが疑問を感じている中、両社は終焉を迎えた。
SpiralFrogに近い筋によると、同社の場合は「マクロ経済の大嵐」を克服できなかったのだという。世界経済の冷え込みが、「資本市場の崩壊」や「広告市場の急速な縮小」と結びついて、SpiralFrogの倒産につながったと、この情報筋は述べた。
しかし、それは原因の一部にすぎない。実のところ、SpiralFrogのサービスが音楽ファンの心をとらえたことは一度もなかった。同サービスでダウンロードできるのは、デジタル著作権管理(DRM)付きの楽曲に限られていた。同じ時期、iTunes StoreやAmazon.comといった有力な音楽サービスは、音楽を著作権保護ソフトウェアから解放し、さまざまな機器で再生できるようにしていた。
さらに、SpiralFrogの音楽ライブラリは、iTunes StoreやImeemをはじめとする競合相手に比べて、常に楽曲数で大幅に劣っていた。4大レコード会社の最大手であるUniversal Music Groupと2006年の夏にライセンス契約を交わしてから、2番手のEMIと契約するまでほぼ2年かかっている。
これはつまり、音楽販売の多くを占めるSony Entertainment GroupとWarner Music Groupの楽曲を、SpiralFrogが提供することはついになかったということだ。
SpiralFrogでは、2人の最高経営責任者(CEO)が就任しては去り、経営陣と創設者のJoe Mohen氏が衝突した。そして、さらに重大だったのはおそらく、同社が負債に苦しんでいたことだろう。
筆者は1年前の記事で、SpiralFrogが事業資金を借り入れ、返済期限の再交渉によって債務不履行を回避したことを取り上げた。その当時、同社の債務は900万ドルを超えており、2008年3月にその返済期限が1年間延長された。
2009年2月にDigital Music Newsに掲載された記事は、SpiralFrogの債務返済期限が迫っているが、同社には返済手段がないかもしれないと示唆していた。
SpiralFrogとRuckusの事業停止は、明白な疑問を投げかけている。それは、広告支援型の音楽サービスが淘汰されているのだろうか、というものだ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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