写真家は、被写体の人物がまばたきしたり、しかめっ面をして写真が台無しになるリスクを減らすために、何枚かの写真と撮る。しかし、今や天文学者らも、より鮮明な天体画像を撮影するために同じ手法を用いている。
ケンブリッジ大学とカリフォルニア工科大学の科学者らが、「Lucky Imaging」と呼ばれる技術を開発した。この手法は、多数の写真を撮影することにより、地球の大気によって天体の画質が損なわれる問題を回避するというもの。この手法を可能にするのが、高速度カメラとコンピュータだ。毎秒20コマの撮影が可能な高速度カメラで撮影した画像の中からコンピュータが最も鮮明な画像を選別し、それらを組み合わせて1枚の画像に仕上げる仕組みだ。
「(この手法を用いて撮影された)これらの画像は、これまで地上あるいは宇宙から撮影された画像の中で最も鮮明だ」と語るのは、ケンブリッジ大学天文学研究所の研究主任を務めるCraig Mackay氏だ。
この手法で撮影された画像は、宇宙で撮影された画像よりも鮮明なうえに、宇宙で撮影する場合に比べコストも大幅に安い。1940年代に開設されたカリフォルニア工科大学のパロマー天文台にある口径200インチのヘール望遠鏡で普通に撮影された画像の鮮明度は、ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された画像の10分の1だ。しかし、LuckyCamと、大気による画像のゆがみを補う補償光学と呼ばれる既存技術を組み合わせることにより、解像度が2倍になるという。
この手法は、南米チリにあるヨーロッパ南天天文台の望遠鏡やハワイのケック天文台にあるケック望遠鏡など、より大規模かつ最新の望遠鏡にも応用可能だ。「コストが安いということは、世界中の望遠鏡に適用可能ということだ」(Mackay氏)
補償光学は赤外線に効果を発揮するが、可視光に関しては、パロマー天文台の望遠鏡よりもハッブル宇宙望遠鏡の方が勝っている。しかし、Lucky Imagingシステムは、補償光学系とより相性の良い素材を作り出すため、結果的にパロマー天文台の望遠鏡の方がハッブル宇宙望遠鏡よりも優位に立つ。
Lucky Imagingは、1970年代から1つのコンセプトとして存在していた。しかし、感度が高く、なおかつ擬似スペックルで画質を劣化させる電子"ノイズ"の少ない新世代画像センサーが開発されたことで、ようやくこの手法の利用が可能になった。研究者らによると、ケンブリッジ大学とカリフォルニア工科大学の研究チームは、英E2V Technologiesが開発したセンサーを使用しているという。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力