米連邦議会上院では米国時間7月26日、「Real ID Act」に関する修正予算案をめぐって大きく意見が分かれた。2013年までに全国民にデジタルIDカードを交付するというReal ID Actについては、これまでも議論が多かったが、26日の採決の結果は新たな疑問を浮上させるものとなった。
50対44という僅差で、同議会は共和党が主張する国防費の修正予算案を否決した。この修正案は、「Real ID Act」を州が実施する費用の補助金として3億ドルの追加予算を計上するというものだ。票数の差は、ほぼ両党の勢力差に等しい。
上院はまた、Real ID Actに批判的なMax Baucus議員(モンタナ州選出、民主党)が提案した改正案を満場一致で可決した。同議員の主張する改正案は、予算の一部たりとも、「国民IDカードの計画、テスト、試験運用、開発」に用いることを禁止するものだ。
26日遅くに行われた最終予算案の採決では、各州のReal ID Act実施費用を補助するための予算として追加で5000万ドルを認めることだけを89対4の賛成多数で可決し、現在はすでに大統領の承認を待つ状態となっている。Bush大統領は以前、予算案のいかなる修正もすべて拒否すると公言していたが、今回のケースもそれに該当するか否かは、いまのところ不明だ。
しかし、上院が可決した予算修正案の数字に全米各州が満足するはずもなく、多くの州はReal ID Actを「補助金もなく下された命令」だとして怒りをあらわにしている。米国土安全保障省は、Real ID Act施行で州および納税者が負担する費用の補助として、向こう10年で230億ドル以上の予算を計上している。アメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union:ACLU)のRealNightmare.orgによると、17州はすでに、新しいデジタルIDカードの導入義務化に反対する立場での州法あるいは決議を制定したという(ただし、すべての州が、そのように感じているというわけではない)。
非常時の戦争予算に関する法律に付随して2005年に制定されたReal ID Actは、同時多発テロに関する調査委員会(9.11委員会)の提案を実行に移すことを目的としている。同委員会は、同時多発テロのハイジャック犯数人が州の運転免許証を不正に取得したと指摘した。しかし、Real ID Actに反対する人々は、この計画は方向を誤ったもので、プライバシーも十分に保護されておらず、かかる費用も膨大だと批判する。
同法では、2008年5月11日以降、すべての米国民は、飛行機での旅行、銀行口座の開設、また社会保障給付の受給などほぼすべての政府サービスを利用する際に、連邦政府が承認した「機械で読み取れる」IDカードが必要となる。また各州は、国家安全保障省の基準に基づいてカードを発行する前に、市民が提出した出生証明書などの身分証明書を電子的に検証することが義務づけられる(同法律の遵守に同意した州には、2013年までの導入猶予期間が与えられる)。
Lamar Alexander上院議員(テネシー州選出、共和党)は7月第4週の初めに、上院での審議で、「議会が州にREAL IDあるいはそれに準ずるものの採用を要求するなら、議会はその費用を支払うべきだ」と述べ、予算の増額を提案した。
しかし、そのAlexander議員でさえ、Real ID Actの要求する内容の構造については疑問があるとして、他の議員とともに要求事項を再度精査してみるつもりだと述べた。発言記録によるとAlexander氏は、「REAL IDに関するかぎり、われわれが費用を負担するべきだし、そうでなければ、同法を撤回すべきだ」と述べている。
アメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union:ACLU)、自由な市場を追求する非営利の研究機関Cato Institute、政府の浪費に反対する市民の会(Citizens Against Government Waste)など、同法に反対する人々は、Alexander議員の提案を「子供だましの金」と評し、REAL IDの実施には推定で数十億ドル規模の費用がかかるのに、州にとってはほとんど何の助けにもならない、と批判した。
ACLUの法律顧問を務めるTim Sparapani氏は声明で、26日の採決の結果は、「Real IDは暗礁に乗り上げており、金額でこの問題を解決できないのは明らか」だと示した、と述べた。「Real IDの問題を解決する唯一の方法は、同法案を廃止にして白紙に戻すことだ。議会にも、その考えが浸透してきている」(Sparapani氏)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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