著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラムの第1回公開トークが3月12日、都内で開催された。慎重論者、賛成論者を含めた多くの関係者らによる積極的な意見交換がなされた。
これは、現行の国内ルールである「著作者の生前プラス死後50年」から「死後70年」へと著作権保護期間を延長する動きがあることを踏まえて開催されたもの。死後70年という国際標準が進む中で「当然の流れ」とする賛成論者に対し、慎重論者からは保護期間の自由化を含む柔軟な対応を求める意見が出るなど、改めて双方主張の隔たりが浮き彫りとなった。
賛成論者として壇上に立った社団法人日本文藝家協会副理事長の三田誠広氏は「欧米諸国が死後70年で統一されていることを考えれば、世界標準として日本もそれに倣うべき」と主張。同じく賛成論者の写真家、瀬尾太一氏(有限責任中間法人日本写真著作権協会常務理事)も「写真は長く『公表後10年』という厳しい環境にあった。これまでに失われた権利はもはや、取り戻すことはできない」とした上で「世界標準に乗ること自体、議論の余地なし」と述べた。
これに対し、フォーラム発起人も務めるノンフィクション作家の佐野眞一氏は「ややもすると非常にせせこましい議論」と厳しく非難。「『著作権業界』の話など、ほとんどの人が議論する必要のない世界」とした上で、「保護期間が20年延長されるから創作意欲が湧く、などというのは俗論中の俗論」と切り捨てた。また、自身の創作活動においても自由な資料閲覧、引用があればこそとし、著作権保護の観点がクリエイター活動の妨げになる可能性についても指摘した。
佐野氏とともに発起人を務める情報セキュリティ大学院副学長、教授の林紘一郎氏は、死後70年以上経過した段階で守るべき著作物があるケースがまれなことなどを示した米国研究者らの論文を踏まえて「保護期間自由化」と「登録制度の導入」を提唱。一定の保護期間を終えた後は権利者自身の登録制とすることで、権利行使や第三者の利活用について柔軟性を持たせることができるとした。
双方意見に大きな隔たりが目立った一方、著作権管理、運営上の課題や作品の利用を広げていくことが重要とする部分など、賛成、慎重論者に共通した認識も見られた。フォーラムのコーディネーターを務めたIT、音楽ジャーナリストの津田大介氏は「双方目指すところは同じと感じる。(議論を通じて)落としどころを探ることができれば」とし、第2回以降も積極的に意見交換をしていく姿勢を見せた。その他、音楽業界などに見られる著作物一括許諾システムについて、文芸界においても早期導入が必要との意見で一致した。
主催は著作権保護の延長問題を考えるフォーラム、共催は慶応義塾大学DMC機構、コンテンツ政策研究会。第2回公開トークは4月12日、慶応義塾大学三田キャンパス東館で開催予定となっている。
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