連邦地裁判事は米国時間2月23日、キヤノンが米国の小規模なナノテク企業とのライセンス契約に違反しているとの判決を下した。次世代フラットパネルテレビを投入しようとするキヤノンにとって、これは大きな障害となる。
テキサス州西部地区連邦地方裁判所のSamuel Sparks判事は、キヤノンが東芝との合弁会社を立ち上げたことにより、Nano-Proprietaryとの契約に違反したとの略式判決を下した。Nano-Proprietaryは、テキサス州に本拠を置く小規模なナノテク企業。
Nano-Proprietaryは1999年、カーボンナノチューブを使って画面やディスプレイを製造する技術をキヤノンにライセンス供与する契約を結んだ。だが、キヤノンが東芝との合弁会社を設立したことを受け、Nano-Proprietaryはキヤノンをライセンス違反で訴えた。
キヤノン、そしてつい最近までは東芝も、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)テレビの開発を進めていた。SEDは発光体に電子を衝突させる原理を用いて画像を表示する。液晶やプラズマディスプレイの画質を凌駕すると言われており、通常のCRT(陰極線管)ディスプレイよりもはるかに薄い。だが、SEDの開発プロジェクトは予定よりも遅れている。
この訴訟の事情に詳しいある情報筋によると、キヤノンが支払う損害賠償の額はまだ決定していないという。また、今回の判決を受け、キヤノンが今後もテレビを製造する場合は新しい契約の締結にむけて交渉をしなければならない。Nano-Proprietaryは2005年にキヤノンをライセンス違反で提訴した。
この訴訟を受けて、東芝とキヤノンにおけるSEDテレビの開発計画は大混乱に陥った。東芝は2006年10月、SEDテレビをCEATEC JAPANで初公開し、登場は2007年後半になると述べた。しかし、12月に入り、2007年1月のConsumer Electronics Show(CES)にSEDテレビを出展しないと発表した。
1月、東芝はキヤノン共同出資していたSED Inc.の全株をキヤノンに売却した。キヤノンとNano-Proprietaryはここ何週間か、訴訟の解決に向けて交渉を重ねてきた。そのため両社の間で、新しい契約が締結される可能性があると見られていた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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