午前4時にかかってくる電話がいい知らせをもたらすものでないように、夕方近くになってから出されるプレスリリースは、たいてい何かよくない発表があることを意味する。
Advanced Micro Devices(AMD)は米国時間1月11日午後、2006年第4四半期の売り上げおよび利益が予想を下回りそうだと発表して、金融界を驚かせた。この発表のわずか数週間前にニューヨークで行われたアナリストとの会合で、AMDはバラ色の2007年予想図を描いて見せたばかりだった。
AMDに対する投資家たちの怒りは、翌12日の株価に表れた。ニューヨーク証券取引所ではAMDの株価が1.92ドル下がり(マイナス約10%)、18.26ドルで取引を終了した。この株価は、2006年7月に記録した52週安値に近いものだ。CitigroupはAMD株を「買い」から「中立」に格下げし、Nollenberger Capital PartnersのHans Mosesmann氏は、AMD株の目標株価を13ドルから8ドルに引き下げた。
失望を禁じ得ない業績の原因はどこにあるのだろう?どうやらAMDは、市場シェアを獲得するために製品の価格を下げるという昔の習慣に立ち返ってしまったようだ。同社は、ここ5、6年の間にこのやり方で名をあげている。
11日のプレスリリースによると、第4四半期には、製品の販売数は増加したものの、「大幅に低下したマイクロプロセッサの平均販売価格」が、1月23日に発表される決算に悪影響を及ぼすという。第4四半期の売り上げは、先頃手に入れたATI Technologiesのグラフィックス事業を除外して、第3四半期の13億3000万ドルから約3%増加する見通しだと、AMDは述べている。だがこれは、同社が「季節的要因が追い風になる」と予測した第4四半期の当初の予測を下回る数字だ。Thomson Financialによると、ATIから獲得したグラフィックス事業とチップセット事業も含めたAMDの売り上げは18億5000万ドル、1株あたりの利益は22セントというのがアナリストたちの予測だった。
AMDはさらに、勢いを盛り返してきたIntelとの競争にもさらされている。ここ数年、デスクトップ市場やサーバ市場においてはAMDが優位を保ってきたが、Intelの新しいPC向けプロセッサ「Core 2 Duo」やサーバ向けプロセッサ「Xeon 5300」が、性能面でAMD製品を明らかに上回る評価を受けるようになった。だがAMDは、価格競争からも依然として抜け出すことができず、新たなチップ生産設備を稼働させてコスト低減を図ろうとしている、とアナリストたちは指摘する。
性能を重視する買い手にとって、AMDは以前のように一押しの選択肢ではなくなった。ゲーマー向けのPCは利益率が高いが、この分野でもIntelから高性能な製品が数種類出ている。サーバー市場でも、Intelのデュアルコア「Xeon 5100」プロセッサの能力はAMDの「Opteron」プロセッサに十分対抗しうるし、クアッドコア時代に向けても、IntelはXeon 5300シリーズのプロセッサでAMDより優位に立った。
AMDの全体の販売額は第4四半期にも増加しており、前述のような状況から影響を受けていないように見える。2006年の後半には、DellがAMDのプロセッサを採用することを決定し、第4四半期のホリデーシーズンという重要な時期にもPC市場はきわめて堅調だった。しかし、Citigroupによれば、利益率の高い高級機市場では確実に影響が出ているという。
Technology Business ResearchのアナリストJohn Spooner氏は、12日に出た報告書で次のように述べている。「(Intelは)サーバー市場において、AMDよりも1コアあたりの価格が安いと胸を張って言える分野がある。2006年11月に発売したXeon 5300プロセッサの中には、デュアルコアXeon 5100プロセッサと同価格帯のものがあり、サーバー市場における勝利に貢献するかもしれないと思う」
また、AMDはIntelに比べて一般消費者向けPCへの依存度がかなり高い、とMercury ResearchのアナリストDean McCarron氏は指摘する。PCメーカーがホリデーシーズンに向けて準備を整えている10月、11月には好調だったようだが、12月に入ってその勢いが弱まった可能性がある。MaCarron氏によると、PCメーカーは翌年第1四半期に使用するプロセッサを11月の終りから12月にかけて注文するので、ホリデーシーズンを過ぎた第1四半期のプロセッサ需要は必ずと言っていいほど落ち込むという。
同氏は、落ち込んだ需要を喚起するためにAMDが価格を引き下げたことから、売り上げは伸びても利益が減少したようだと語った。株式市場はこのようなやり方をあまり好まない。AMDの2006年度第3四半期の決算を見ると、第2四半期に比べて粗利益がかなり低下しており、金融関係者はすでに懸念を抱いていた。
皮肉なことに、AMDが抱える問題のいくつかは同社製品に対する需要が高まったことに起因しているように思える。AMDは、ドイツのドレスデンにある65ナノメートル生産設備がフル稼働を開始するのを待っている状態だ。プロセッサはシリコンウエハ上に形成するため、プロセッサのサイズが小さくなれば1枚のウエハから製造できるプロセッサの数が増えて1基あたりの製造コストが下がり、顧客にそれだけ多くのプロセッサを供給できるようになる。
Dellという顧客に対して、AMDは特に大きな関心を寄せつつあるように見える。長年にわたってAMDに興味を示さなかったDellだが、ここへきてAMDの技術に基づいたサーバ、デスクトップPC、ノートPCの販売を開始した。しかしながら、Dellはいろいろと注文の多い企業として知られており、供給量確保の保証や、製品採用の見返りとしての値引きを要求したかもしれない、とMcCarron氏は話す。
新しい生産技術を十分に活かしきれていない今の段階で、Dellに対して割引価格で一定数のプロセッサを納入せざるを得ないとすれば、AMDの総売り上げが増えたとしても、粗利益への打撃は避けられないだろう。しかし、AMDのある関係者は、業績見通しの発表に先立って財政面についてコメントすることを拒んだ。
1月23日の金融アナリスト向け電話会見で明らかになる公式声明は、注目の的となるだろう。数週間前の会合で明るい展望を語りながら業績見通しを下方修正したAMDに対し、アナリストは不満の色を隠せない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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