ライブドアは11月22日、全金融事業を投資会社に売却すると発表した。譲渡金額は実質551億円。金融事業はライブドアの利益面を支える屋台骨だったが、一連の「ライブドア事件」が影響し、売却を余儀なくされた。
売却先は「APFH」。投資会社のアドバンテッジパートナーズLLPが運営・管理する投資事業組合などの出資を受けた本件譲渡のための受け皿会社となる。ライブドアグループの中間持株会社でライブドアフィナンシャルホールディングス(LDFH)はAPFHに対し、2006年12月20日、LDFHの全株式にあたる8010株を175億7700万円で譲渡する計画。あわせてライブドアがLDFHおよびその子会社に対して有する貸付債権376億円を回収するため、実質的な譲渡金額は551億円になるとしている。
同社の全金融事業は、LDFHが中核のライブドア証券など8社を束ねる。8子会社はライブドア証券のほか、ライブドアコモディティ、ライブドアクレジット、ビットキャッシュ、ライブドアカード、セシールクレジットサービス、英極軟件開発有限公司――となる。英極軟件開発有限公司についてはライブドアへ譲渡する。
ライブドアグループはネット関連企業として認知されているものの、8割程度の利益を金融事業に依存しており、LDFHはライブドアグループにおける事実上の屋台骨。しかし、2006年1月の東京地検特捜部強制捜査に端を発する一連のライブドア事件を受け、法制面で金融事業の継続が困難な状況になり、LDFHを手放すことになった。
ライブドア証券の証券取引法違反容疑で有罪判決が確定した場合、ライブドアは同社の主要株主であり、証券取引法上議決権ベースで20%以上の株式を有することができなくなるため、経営を続けることは困難になる可能性が高い。ライブドア証券を中核子会社と位置付けることが難しいと判断したため、LDFHグループ一体での売却が望ましい選択であるという結論に至った。
同日開催された会見にはLDFH代表取締役社長の清水幸裕氏とアドバンテッジパートナーズLLP共同パートナーのリチャード・エル・フォルソム氏が出席し、売却の経緯や今後の方針について説明した。なお、ライブドア本体からの出席者はなく、清水氏も「今日はLDFHの社長として出席している」として、ライブドア本体からの説明がない形での会見となった。
ライブドアは2006年5月以降、モルガン・スタンレー証券や日興シティグループ証券をアドバイザーとして、売却先について競争入札を実施していたという。清水氏は、顧客や取引先、株主らに『コンプライアンスの徹底した遵守』『ネット企業を通じて培ったスキルと金融ノウハウを融合した企業文化の構築』『顧客のニーズを把握し、バンドル化した商品の提供にとどまらないサービスの提供』の3つの約束を果たしていくと、抱負を語った。
今後の業務については、「今までライブドアグループとして囲い込んだ事業を展開していたが、今後は、ヤフーでもドコモでも提携先を考えていきたい。ライブドアもその選択肢の1つだ」(清水氏)とした。
代表取締役社長は引き続き清水氏が務めるほか、現在約400名のLDFH従業員の雇用も続ける。今後は社名の変更も予定しているという。清水氏は現在、ライブドアの代表取締役副社長も兼任する立場だが、今後「ライブドアについては時期を見て辞任する」(清水氏)とした。
また、フォルソム氏は購入の理由について「顧客や事業基盤があり、より一層の成長が見込める企業」と語る。アドバンテッジパートナーズLLPは今後、3〜5年の期間をめどにしてLDFHの上場を目指す。同LLPはコンビニエンスストアの「am/pm」などを手掛けるレックス・ホールディングスのMBO(Managed By Out:経営陣による企業買収)の支援も行っているが、今回もライブドアからLDFHの株式を100%引き受けたうえで、MBOの支援を進める。
ライブドアとしては主力の金融事業を失うことになるが、株主への責任のついて「2005年9月期や2006年3月中間期の決算に比べて利益ベースでは貢献できていない」(清水氏)と語った。ライブドアは今後、コマース事業で利益を確保しつつ、ネットサービス事業の拡大と黒字化を目指す模様。ただ、2006年9月期第3四半期(05年10月〜06年6月)連結決算によると、主力4部門のうち、ネット関連2部門は赤字。コマース部門の営業利益は約14億円、ファイナンス部門は約81億円となっており、金融部門が8割程度の利益を担っている。
ネットサービス事業 | ネットメディア事業 | コマース事業 | ファイナンス事業 | その他 | |
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売上高 | 10792085 | 5646681 | 37779877 | 43885578 | 4823492 |
営業利益 | ▲93097 | ▲480182 | 1392935 | 8113999 | ▲515001 |
清水氏は今後ネットメディア事業に注力とすることを強調する。いわゆるライブドア事件の直後、一時はピークの30%まで落ちた広告も代表取締役社長兼CEOに平松庚三氏が就任してから順調に回復し、現在ピークの70%まで回復していると説明。「現状単月赤字だが、2007年第4四半期には単月黒字化する見込み」とした。
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