マサチューセッツ州ケンブリッジ発--米国時間10月17日、当地で開催されたカンファレンス「Lux Executive Summit」の席上で、ナノ素材によって生じる環境および健康へのリスクは現実の問題であり、業界と規制当局の双方が本腰を入れて取り組む必要があると、複数の専門家が警告した。
Lux Researchが主催し、ビジネスマンと投資家が一堂に会する同カンファレンスでは、ナノテクノロジに関連する環境と健康の問題をテーマとする2つのセッションが開催された。
講演者たちは、ナノ素材が原因で起こり得る特定のリスクについては言及しなかった。むしろ、潜在的なリスク(世間の受け止め方なども含まれる)の存在を認識し、業界関係者に対しては製品の開発後ではなく開発の初期段階からこの問題に取り組むよう求めた。
ナノテクノロジはナノ単位の物質を扱う科学で、1ナノメートルは10億分の1メートル。人間の毛髪の太さは約8万ナノメートルに相当する。
ナノ素材の用途は幅広く、ソーラーパネルからゴルフボール、さらには医薬品などに利用されている。Lux Researchが2006年に発表した調査によると、世界の大手企業上位1331社の中では148社がナノテクノロジ関連プロジェクトを進めているほか、2008年には参加企業数は倍増し、企業の研究開発費は120億ドルに膨らむと予想されるという。
しかし、ナノ素材が使用された製品が市販されるようになった現在でも、環境や健康へのリスクについては十分に把握できていないと、Lux Researchのアナリストでナノ分野を専門とするMichael Holman氏は指摘する。
「われわれの理解は不十分だ。多くの混乱があり、その解決には長い時間と困難が伴うだろう」(Holman氏)
Holman氏は、アイクリームなどの製品に使用されているサッカーボール状に結合した炭素分子、フラーレンの例を挙げた。廃棄されたフラーレンの影響を測定することを目的としたある検証では、この物質がオオクチバスの脳を損傷するとの結果が出た。
だがその後、一部の研究者は、フラーレンがオオクチバスによい影響を与える可能性もあると主張し、検証の結果をめぐって論争が起きた、とHolman氏は説明した。
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