「経営に奇手奇策なし」--松下電器、営業利益率10%への道のり

永井美智子(編集部)2006年07月08日 17時19分

 「製造業としての基本を他のどこよりも忠実に実行する。奇手奇策はない」--松下電器産業の新社長に就任した大坪文雄氏が7月7日に会見し、前社長の中村邦夫氏の路線を継承するとともに、商品力の強化とコスト削減で2011年3月期に営業利益率10%を目指す考えを明らかにした。

 松下電器は2002年3月期に1990億円の営業損失を計上したのを底に、2006年3月期まで4年連続で増収増益を続けている。この原動力となったのが、中村氏が掲げた「破壊と創造」という経営方針だ。同氏は「創業理念以外はすべで破壊する」として、流通の改革やグループ事業の再編、松下電工の子会社化と共同商品の開発などに尽力した。また、「V商品」と呼ぶ特定の商品群に経営資源を集中。世界同時に戦略商品を発売して一気にシェアを獲得する「垂直立ち上げ」という手法を確立して市場における松下電器の存在感を大きく高めた。

大坪文雄氏 新社長に就任した大坪文雄氏

 大坪氏は中村氏の時代で「世界で戦うための大きな枠組みはできた」と話し、まずはこの路線の完成度を高めることを主軸に置く。価格競争に耐えられる「体力」を強化するべく、コスト削減に努める。「開発設計がコスト力強化の鍵」(大坪氏)として、部品点数の削減や部品の標準化と共用化、ソフトウェアの再利用などに取り組む。

 同時に、キーデバイスの内製化により他社との差別化を図り、商品力を強化する。後発ながら一気にシェアを奪ったデジタルカメラ「LUMIX」の成功体験をほかの製品にも広げる考えだ。

 中期的な成長を担う重点分野は、薄型テレビ、カーエレクトロニクス、生活快適実現事業と同社が呼ぶホームエレクトロニクス、半導体の4つ。薄型テレビとカーエレクトロニクスについては早期に1兆円の売上規模を目指す。

 松下電器の2005年度の営業利益率は4.7%で、2007年3月度に同5%を達成するという目標については、達成のめどはたっているという。同10%を超えるにはコスト削減以外にもさらなる施策が必要とみられるが、「詳しいことは2007年1月に公表する中期経営計画の中で明らかにしたい」(大坪氏)と述べるにとどめた。

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