リサイクルPCを提供する最大規模の慈善団体のトップが、発展途上国向けに特別仕様のノートPCを製作する活動には基本的な問題があると主張している。
英国の慈善団体Computer Aid Internationalの創設者兼CEOのTony Roberts氏によると、One Laptop Per Child(OLPC)プロジェクトは、IT業界の歴史に対する重大な誤解に基づいた取り組みだという。
Roberts氏は先週ZDNet UKのインタビューに応じ、OLPCプロジェクトが成功すればそれは非常に喜ばしいことだとしたうえで、同プロジェクトの基盤を成す戦略には不安の念を抱かざるを得ないと述べた。
「これが成功しないと思う本当の理由は、プロジェクトが技術の歴史に対する誤解に基づいているからだ。彼らは、実績のない、標準規格外のプラットフォームを投入しようとしている。それも、政府にしか販売しない計画だ。購入の意思決定は5年ごとに任期を迎える政治家が下すことになる。政治家にとって、規格外の技術を選ぶことは政治生命を脅かしかねない行為だ。普通の政治家はそんな判断を下さない」(Roberts氏)
OLPCプロジェクトは、開発途上国の子供たちのために1台当たり100ドル前後の小型PCを開発することを目指している。Negroponte氏によると、当初の計画発表以降、価格は135〜140ドル程度へと引き上げられているという。
6月初めに開催されたRed Hat Summitで講演したOLPCプロジェクトのトップNicholas Negroponte氏によると、開発途上国の子どもにコンピュータを与えるというこれまでの試みが失敗に終わったのは、子どもたちがそれらを自分のものだと認識せず、PCを自分で試してみる機会が少なかったためだという。
「『学校にPCを10万台寄付したのに、それがまだ箱に入ったままだ』などという話を聞く。問題なのは、寄付する相手が間違っていたことだ。子どもたちはそれが自分たちのものだと思わず、政府の資産だと思いこんだり、放課後は鍵のかかった場所に置かれた使えなくなったりしている」(Negroponte氏)
しかし、Computer Aidの責任者を務める傍ら大学教師として社会への新技術導入の歴史について教えるRoberts氏は、OLPCプロジェクトは発展途上国におけるほかの価値ある技術プロジェクトに対する関心をも奪っているという。
「(OLPCのプロトタイプが2005年に初披露された)国連の世界首脳会議では、ほかにも多くの既存プロジェクトが紹介されたが、OLPCに関心が集中し、ほかが全く注目されなかった」(Roberts氏)
Computer Aidは発展途上国への7万台目のPC出荷を記録したばかりだ。1998年に創設された同組織は、中古のPC、ルータ、プリンタなどの各種技術製品のリサイクルを行っている。これらは、発展途上国の各種組織に向けて出荷され、そこから各種学校や大学、およびコミュニティーグループに配布されている。
同組織では活動を拡大し、各地の医療機関と協力して看護師向けのe-ラーニングシステムや遠隔医療技術の提供も目指している。発展途上国の医療専門家は首都に集中する場合がほとんどであるため、都市の医師に詳細な患者情報さえ提供できるようになれば、患者を移送する回数を減らすことができる。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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