Intelの研究対象は、もはやトランジスタや回路の開発だけではない。電子工学と変わらないほどの比重で社会科学が重要視されはじめている。
Intel Researchは米国時間6月7日、カリフォルニア州サンタクララの本社で、メディアやアナリストに向けてその門戸を開いた。ノートPCの消費電力を削減したり、混雑した環境でワイヤレス信号をターゲットに確実に到達させる方法を見いだすといった従来分野のプロジェクトが数多く披露されたが、一方で、Intelが近年取り組んでいる、人々がどのような理由でどのようにテクノロジを利用しているかを解明しようという研究の一端も公開された。
たとえば、Intelの2人の研究員はアジア全域を数カ月をかけて旅し、人々が携帯電話のようなハンドヘルド機にどのような感情を抱いているかを観察してまわった。多くの人々が携帯電話を友人や家族との間をより緊密にするための社会的手段だととらえていた。しかし、研究員たちの印象に強く残ったのは日本のある男性だった。この男性は、携帯電話の画面に寺の写真をロードし、精神的につらくなるたびにその写真を眺めていたのだと、IntelのDigital HomeグループのTodd Harple氏(人類学者)は語った。
「人々はこんなふうにテクノロジによって連想を広げるのだ」とHarple氏。Intelではこうした発見を生かして、性能を提供するだけにはとどまらない製品を作っていきたいと考えていると、Harple氏は続けた。
もちろん、性能の重要性をおろそかにしようというわけではない。多くの研究員達が披露したさまざまなプロジェクトは、家庭用PCがテラバイト規模のデータを処理し、1テラフロップス(1秒間に1兆回の浮動小数点演算)もの演算能力を持つような「テラスケール」の時代を、Intelが視野に入れていることを示していた。こんなレベルの性能を実現するためには、シングルプロセッサに数百のコアが必要になるだろうと、Intelの研究所で技術管理担当のディレクターを務めるJerry Bautista氏は語っている。
また、こうしたシステムではコンピュータ間の通信も可能でなければならないため、ワイヤレス通信の性能を改善するための新しい研究も活発化している。Intelはワイヤレス分野の投資を縮小する可能性もあると報じられているが、混雑した環境におけるワイヤレス通信の精度を向上させたり、多様なネットワーク上でやりとりができるワイヤレス機器の開発といったプロジェクトを進行させている。
Intelの研究員にとって消費電力の削減もまた重要な課題だ。Intelのシニアエレクトリカルエンジニア、Jeremy Lees氏が手がけているプロジェクトは、ノートPCのディスプレイが長い間同じ画像を表示し続けるような場合に、ディスプレイを他のシステムから切り離し、ディスプレイ自体が画像を保存するようにしようというものだ。この技術のためには、製品にメモリを組み込むようにディスプレイメーカーにうながす必要があるし、たとえば「PowerPoint」を使ってプレゼンテーションをする場合のように、さほど頻繁に表示内容を更新する見込みでないことをディスプレイが認識できるようにするため、システムのチップセットのインターフェースも開発しなければならないとLees氏は語る。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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