Bill Gatesに次いでMicrosoftで最も技術に精通した幹部であるJim Allchinが2006年末に同社を退社する。Allchinが残した遺産、それは、今やほぼ全てのデスクトップに搭載されている「Windows」だ。
Allchin(53歳)は1990年にMicrosoftに入社し、当初は同社のネットワーキング製品戦略の策定に携わっていた。Microsoftへの入社前に勤務していたBanyan Systemsでは、すでに製造打ち切りとなったネットワークオペレーティングシステム(OS)「Vines」を設計していた。MicrosoftにおけるAllchinの主な功績は、Windows OSの開発を指揮したことだ。
「Windowsに関して言えば、Jimが全責任を負っている」と語るのは、調査会社Jupiter Researchのアナリスト、Michael Gartenbergだ。同氏はさらに次のように続けた。「Allchinは長年、(Microsoftの中で)Windowsに関する指導者的役割を果たし、同社の主力製品である同OSに関する計画策定において極めて重大な責任を担っていた。」
Microsoftは20日、2006年末に予定される「Windows XP」の後継版、「Windows Vista」の発売後にAllchinが退職する予定であると発表した。Allchinはそれまでの間、同氏の後を継ぐ元販売部門責任者のKevin Johnsonと共に、新設されたPlatform Products and Services部門の指揮を取る。
しかし、Directions on Microsoftのアナリスト、Rob Helmは、確かにJohnsonはMicrosoftの販売/マーケティング部門で出世街道を歩んできたスター社員だが、Allchinの代わりは務まらない、と指摘する。
Helmは、「JohnsonはAllchinのポストを受け継ぐが、Johnsonは技術の研究/開発に没頭するタイプではない。彼は大変有能なマネージャではあるが、同社のシニアテクニカルアーキテクトではない」と述べ、さらに「私は、Allchinの代役がしっかりと務まる人物をMicrosoftが指名しなかったことに驚かされた。Allchinが務めたポストの1つは現在空席の状態だ」と語った。
Helmによると、現在AllchinはBill Gatesに次ぐ、Microsoftの「技術に精通した最年長幹部(most senior geek)」だという。さらに同氏は、「(Allchinは)誰もが夢にも思わなかったほどの成功を収めた。『Windows NT』によって、NovellをIT業界の隅に追いやったのだ」と述べ、さらに、「MicrosoftはAllchinの指揮下で、ネットワーキング分野において追随者からリーダーへと上り詰めた」と付け加えた。
過去のエピソード
Allchinは、WindowsこそMicrosoftの主力製品であるとの強い信念を持っており、1990年代半ばにインターネットが登場した時もその信念を曲げなかったことで知られる。Microsoftの他の社員が、より迅速かつ完全な形でのインターネットの取り込みを主張する中、AllchinはWindowsとウェブブラウザの「Internet Explorer(IE)」との統合を強く主張した。
David Bankの著書、『Breaking Windows』によると、Allchinは1997年初頭に、「Losing a Franchise--The Microsoft Windows Story (a new Harvard case study)」と題したメールをGatesに送った。Allchinはそのメールの中で、Windowsだけでなく他のOS向けのIEをリリースする計画に悩まされていると訴えた。「私は、このクロスプラットフォーム構想はMicrosoft内の病気だと考えている。われわれは、自らの頭に銃を押し当て、引き金を引く決意だ。」Gatesは、Allchinの意見に賛同し、同社の方針をAllchinの見解の方向に戻し始めた。
IEのWindowsへの統合に伴い、Microsoft内部では、ウェブブラウザ開発を指揮していたBrad Silverbergが退社するなど、上層部の再編成が行なわれた。
調査会社Enderle Groupのアナリスト、Rob Enderleによると、これはAllchinがMicrosoft内で持つ権力を示すエピソードの1例だという。「(Allchinは)同社の権力者の1人だ。同氏はGatesとBallmerに次ぐ第三の権力者であり、大半の人々から大変好かれていた」(Enderle)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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