ソニーは7月28日、2006年3月期の連結業績予想を下方修正すると発表した。テレビ事業が世界的に苦戦しているためで、営業利益は4月の予想値から1300億円引き下げて300億円と見込む。ここにはソニー厚生年金基金の代行部分の返上に伴う利益600億円が含まれているため、実質的には300億円の赤字に転落する。
売上高は前年同期比1.2%増の7兆2500億円(4月予想値より2000億円減)、純利益は同93.8%減の100億円(同700億円減)と予想する。なお、構造改革費用は4月予想値よりも160億円増えて880億円となる見込みだ。
営業利益の下方修正の主な要因はエレクトロニクス分野の不振で、同分野の営業利益予想を1350億円引き下げたためとソニー コーポレートエグゼクティブ SVPの湯原隆男氏は話す。
なかでも苦戦しているのがテレビ事業だ。欧米では価格下落への対応が遅れ、日本では普及価格帯モデルの『<ハッピーベガ>』の生産が追いつかず、シェアが予想値を下回った。
さらに欧州では、同社の主力だった32〜34型のブラウン管(CRT)テレビが液晶テレビに押されている。同社は液晶テレビも展開しているが、液晶テレビは基幹部品を自前で持っていないため、利益率が大幅に下がる要因となった。
海外のCRTテレビ工場の閉鎖など「痛みを伴う再建は避けられない」と井原氏は話す
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「ソニーはCRTテレビのガラス製造から組み立てまで、深いバリューチェーンを社内に持っている。CRTテレビが液晶テレビに置き換わることのマイナスインパクトは非常に大きい」(ソニー代表執行役副社長ホームエレクトロニクスネットワークカンパニーNCプレジデントの井原勝美氏)
液晶テレビや大型の薄型テレビであるリアプロジェクションテレビも北米を中心に展開しているが、「価格競争力が伴わず、利益の向上に結びつかない」と井原氏は苦汁の表情を浮かべた。
2006年3月期における同社のテレビ販売台数は、CRTテレビが前年同期比24%減の720万台、液晶テレビが同154%増の250万台、リアプロジェクションテレビが同109%増の140万台、その他のテレビが同64%減の30万台となり、合計では同5%減の1140万台となる見込みだ。
この状況を打破するため、ソニーではコスト改善、商品力の強化、テレビ生産体制の見直しの3つを推進する。まずコストについては、Samsung Electronicsとの合弁会社「S-LCD」の液晶パネルを採用し、部品調達コストを削減する。この液晶パネルを「ソニーパネル」と名付け、高い視野角と動画応答速度を持たせる。
また、設計の世界共通化もすすめる。これまでソニーは日本、米国、欧州でそれぞれ 地域に合わせた設計をしていた。このため、「日本でヒットした、普及価格帯の『<ハッピーベガ>』も欧米で投入できず、低価格帯の市場で価格競争力のある製品が出せなかった」(井原氏)。今後は基幹設計を日本で手がけ、各地域ではチューナの設計や独自アプリケーションのサポートのみを行う考えだ。
これらの施策により、「2007年3月期の下半期にはテレビ事業の黒字化を目指す」(井原氏)としている。
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