ハイテク業界団体が、米下院で先週可決された「Buy American(米国製品を購入せよ)」法案を激しく非難した。これを受け、米国では国際貿易をめぐる論争がさらに激化している。
Information Technology Association of America(ITAA)は米国時間20日、同法案について、安全保障政策としても経済政策としても最悪だと非難した。Homeland Security Authorization Actを改正して作られた同法案が立法化されれば、米国土安全保障省(DHS)は、材料の大半が米国製である製品の購入が義務付けられることになる。
Buy American法案は、Don Manzullo下院議員(共和党、イリノイ州選出)が作成し、18日に下院で可決された。同法案はDHSに対し、構成部品の50%以上が米国内で採掘/生産/製造された製品の購入を義務付けている。
ITAA会長のHarris Millerは、「こんな購入禁止法が成立したら、(DHSは)コンピュータや携帯電話なしで仕事をしなければならなくなるだろう」と述べ、さらに「米国内のメーカーで、これらの機器の構成部品の50%以上を米国製にするという基準を満たせる企業など1社も思い当たらない」と語った。
Manzulloによると、同法案は世界大恐慌時に可決されたBuy American Actの伝統を受け継いでいるという。同氏は18日、「米国民の税金が使われるのであれば、連邦政府には可能な限り米国メーカーの製品やサービスを購入させなくてはならない」と述べ、さらに「この法案は、Buy American Actの趣旨を維持する一方、米国の産業基盤を復興し、米国民の雇用を創出するものだ」と語った。
Manzulloによると、米国製部品の代わりに外国製部品の使用を可能にする数々の協定を米国がさまざまな国々との間で締結した結果、徐々にBuy American Actの効力が薄れていったという。同氏によると、米国防総省はBuy American Actに反する協定を21カ国との間で結んでいるという。Manzulloの修正案が立法化されれば、DHSは構成部品全体に占める米国製部品の割合が50%を下回る製品を購入できなくなる。
プログラミングなどの業務をより人件費の安い国々に委託する企業が増加しているのに伴い、ここ数年、世界貿易をめぐる論争が再燃している。およそ1週間前からは米中間の貿易摩擦が激化している。これまで中国は、人民元の対ドル為替レートを固定し、元の通貨価値を人為的に低く保つことにより国内の輸出産業を支援しているとして非難されてきた。
貿易をめぐる米中の論争は爆発寸前の状況にあるため、米国のハイテク産業は中国による元の切り上げを強く望んでいるが、同国に対する圧力のかけ方については見解が分かれている。
現在世界には様々な貿易協定が存在するが、それらは少なくとも短期的に見れば、米国のハイテク企業にとってプラス面よりもマイナス面の方が多そうだ。ITAAが資金提供して2004年に作成されたソフトウェアおよびITサービスの海外アウトソーシングに関する報告書によると、(IT業務の海外アウトソーシングにより)米国のIT労働者は犠牲になるが、その結果、米国経済全体は改善するという。
ITAAのMillerは、最新の「Buy American」法が成立すれば、諸外国も同様の規制法を制定し、その結果、米国政府の業務遂行に要するコストは増加すると見ている。同氏は、「同法案は、テロの脅威との戦いにおける常識を政治に当てはめようとするものであると同時に、米国の貿易相手国に対し、保護貿易政策は世界貿易に勝るというメッセージを送るものだ」とし、「そんな法案は米国にとって何のプラスにもならない」と付け加えた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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