大学の医学部にインクジェット技術が導入され、もうすぐ骨折の治療で活躍する可能性がある。
英国マンチェスター大学の研究者らが、生きたヒト細胞をインクジェットのノズルで患者に噴霧するテクニックの開発に取り組んでいる。これが実現すれば、医師が患者に代替組織を接種し、これが必要な大きさと形に成長することで治癒プロセスを加速できる可能性がある。また、ドナーの拒絶反応の確率を減らすため、あらかじめ患者から採取してあったサンプルから種細胞を生育することも可能になる。
マンチェスター大学教授で素材科学を専門とするBrian Derbyによると、同大学の研究グループはこれまでに、人間の線維芽細胞や骨芽細胞の吹き付け(および生育)にこのテクニックを利用しているという。これらの細胞はそれぞれ、筋肉組織および骨を形成する役割を担うもの。彼らはまた、牛の軟骨細胞の生育も行っているという。
Derbyは「関心があるのは軟骨、骨、そして血管だ。皮膚にも適用可能だが、われわれとしてはそこには重点を置いていない。まず最初に骨の置換に応用されると思う」と電子メールのなかで述べている。
医師がこれらのテクニックを5〜10年以内にも使いはじめるかもしれないと同氏は指摘しており、またそれ以前にもバイオ技術業界向けのツール開発に応用される可能性があるという。同じようなインクジェットの研究は、日本や米サウスカロライナ州のクレムソン大学でも行われている。
いまのところ、このテクニックは生体では試されておらず、研究者らは栄養素の入った「井戸」に生きた細胞を噴霧している。細胞は完全な状態で付着し、最初の24時間以内に増殖する。Derbyのグループは、骨組の生成にもインクジェットを用いている。骨組は、細胞が含まれる極めて小さな繊維構造で、組織再生の開始とコントロールを助けるもの。
異なる細胞型を混在させることも可能性で、これにより、医師は一段と複雑な組織機能を再現できるようになる。
このグループは英国のインクジェットメーカーXaarと協力し、ヒト細胞噴霧用に同社製品の改良を進めている。溶滴の形で噴霧される細胞は秒速約30センチで噴射され、約1000Gで加速する。
「驚くべきことだが、このような状況下でも細胞は実際に生き残るようだ。ただ、噴霧の課程で細胞が絶対に変化しないよう保証するにはまだ努力が必要だ」(Derby)
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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