アリゾナ州スコッツデール発--著名な物理学者のFreeman Dysonが、たとえ純粋な娯楽のためであっても、人類は宇宙探査を続けなければならないと訴えた。
プリンストン高等研究所の名誉教授という肩書きを持つDysonは、今週当地で開催されたPC Forumの分科会であるFlight Schoolで講演を行い、未来の可能性について概略を述べた。同氏によると、人類はやがて小惑星を植民地化したり、火星でジャガイモを育てるために遺伝子操作を行うようになるという(PC Forumは、News.comを運営するCNET Networksが主催するイベント)。
宇宙への進出の動機としては、もっと多くの空間が必要なことや汚染されていない環境の必要性が考えられるが、しかしそれ以外に世俗的なものもある。
「税金の支払いや義理の母親が嫌いという理由で宇宙に出て行く人も現れるだろう。だが、それが前人未到の行為だというのが一番の理由だ」(Dyson)
もっと近い将来に目を向けると、今後15年のうちには、中国による月面基地の建設を受け、米国が有人宇宙飛行計画を再開することになりそうだ。
「まるでスポーツの国際大会のようで、面白い。人々はオリンピックやサッカーが好きだが、それと同じように有人宇宙探査も好きだ」(Dyson)
しかし、こうした可能性が実現するには、推進技術におけるブレークスルーがいくつか必要となる。「必要なのは地上に建設された発射システムだ」(Dyson)
この技術の候補としては、まずレーザー推進が考えられる。レンスラー工科大学では、レーザーを使い、重量5オンスの物体を空気中で300フィート推進できることを実証している。この仕組みを使って、人間の乗った「フォルクスワーゲン程度の大きさ」の機体を打ち上げるには、1000メガワットのレーザー発射台を山頂に設置する必要がある。これは技術的には達成可能だが、ただしそれをビジネスとして成立させるには、ほぼ5分に1度打ち上げを行わなくてはならないことになる。
別の選択肢としてはSlingotronが考えられる。「これはバカでかいパチンコであり、人間を飛ばすと死ぬ危険があるが、カーゴの打ち上げには利用できる」(Dyson)
3つめの選択肢は宇宙エレベータだ。この巨大な構造物はカスタマイズされた分子でできており、人間を宇宙空間にはじき出すことができるという。
「私が『こんな仕組みでは無理だ』と以前に言ったことは記録に残っている。しかし、私は自分が間違っていたことを証明されるのが大好きだ」と同氏は述べた。
Dyson自身は1950年代から60年代にかけて、人類を火星に送るOrionというプロジェクトに携わっていた。コネチカット州のある潜水艦メーカーが建造することになっていたOrionは、実現していれば文字通りの宇宙船になっていただろう。
「われわれはノート片手に火星を散歩し、あらゆるものをスケッチするつもりでいた。19世紀に想像されたような本物の宇宙探検になっていたはずだ」と同氏は笑った。
しかし、原子力推進式のこの宇宙船は、2秒ごとに1つずつ、合わせて3000個の原子爆弾を爆発させる必要があった。
この宇宙船がきちんと動くことは、プロトタイプを使った実験やシミュレーションで証明されていた。またApolloロケットに比べてはるかにコストも少なかった。そして、当初の計画では1965年までに火星へ、そして1970年までには土星の月へ到達することになっていた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス