IBMの最高経営責任者(CEO)Sam Palmisanoが、PC事業の売却について社員に説明を行った。
CNET News.comが確認したところ、Palmisanoは社員に宛てたメモのなかで、オンデマンドコンピューティング戦略とPC事業の両立が困難になったと説明している。IBMはオンデマンド戦略を通して、複雑なコンピューティングインフラや、ビデオ用検索エンジンなどのアプリケーション開発(および販売)に取り組んでいる。これらのプロジェクトが軌道に乗るまでには通常、何年間にも及ぶ研究や開発が必要とされる。
「IBMは革新的な企業である。進化し続ける必要があるからこそ、われわれは、ハードウェア、ソフトウェア、サービス、コア技術の機能強化に何十億ドルもの投資を行ってきた」と同氏のメモには記されている。
これと対照的に、PC事業では、製造効率の向上が求められる。
「PC事業の特性は、家電業界の特性に似てきた。家電業界では、スケールメリット、価格決定力、個人顧客の重視が求められる」(同メモ)
Palmisanoはさらに、「これら2つは、ビジネスとしても、経済モデルの観点からも、全く異質のものである。数年後にはこの差がもっと大きくなる。Lenovoの方が、PC業界で大きなチャンスをつかむ良い位置につくことができる。Lenovoは、PC業界での投資やビジネス拡大、顧客獲得に責任をもって取り組んでいくだろう」と述べている。
もちろん、このように表明したIBMの幹部はPalmisanoが初めてではない。元CEOのLou Gerstnerも、IBMはハイエンド向けのサービスやコンピューティング技術に専念する必要があると、機会あるごとに述べていた。しかし、PC事業から撤退するには、大きな不安があった。IBMに複雑なバックエンドシステムの構築を発注する大企業顧客は、同社のノートPCもあわせて購入するケースが多いからだ。
今回の決定は、中国--世界で最も急速に発展する大規模なIT市場--におけるIBMの活動にとってもプラスに作用するだろうとPalmisanoは付け加えた。IBMは別のパワーポイントファイルのなかで、IBM-Lenovoのジョイントベンチャーは中国PC市場で34%のシェアを握ることになると説明している。この結果、このジョイントベンチャーはアジア最大のPCメーカーとなり、中国で最も大規模なITベンダにもなる。
Palmisanoは人員削減については言及していない。このパワーポイントのなかで、Lenovoに売却されることが決まったPersonal Systems GroupのPeter Haddad(人事担当バイスプレジデント)は、報酬や休暇などの勤務条件はIBM在籍時と似たものになるだろうと述べている。このスライドにはさらに、今回の決定で同グループは独自経営を行う機会を手にすることにもなると書かれている。
今回の売却決定はすでにIBM従業員のメンタル面に影響を及ぼしており、とりわけPersonal Systems Groupの本拠地があるノースカロライナの従業員にとっては深刻な問題となっているようだ。
「ノースカロライナで働いている人間は、全員がとても動揺している」とある情報筋は語った。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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