経営コンサルティング会社のBoston Consulting Group(BCG)は米国時間15日、海外アウトソーシングに関する報告書を発表したが、その結論を一言で表せば、「企業よ、業務を海外移転せよ」ということになる。業務の海外移転問題は米国内で物議を醸しており、今回の発表以前にも、いくつかの団体・企業が海外への業務移転を支持する意見を表明している。
業務の海外移転については、米国民の仕事を奪うと非難する声もあれば、一方では米国経済にとって健全なことと擁護する声もある。BCGは今回の報告書のなかで、コストの安い国々への業務移転は企業に利益をもたらすとしており、移転するなら早ければ早いほど良いと主張する。
BCGは報告書のなかで、「確かに多くの困難はあるが、目下の問題はグローバル化するか否かではなく、どの程度の量の業務をいかに早く移転するかだ」と述べ、さらに「競争上最も優位に立てるのは、(業務の海外移転を)最も早く実行し、最も真剣に取り組んだ企業だ」と主張している。
実際にどれだけの業務が海外へ移転されているかについては、相変わらず正確につかめていない。米政府が先ごろ発表した報告書によると、第1四半期に行なわれた大量のレイオフの被害を受けた労働者のうち、業務が海外に移転されたことによって職を失った者はごくわずかだったという。しかし、この調査は限られた範囲内で行われたものだった。また、調査会社のForrester Researchは以前、2015年までに米国民340万人分のサービス業務が海外に移転されるとの予測を発表し、この予測はしばしば引き合いに出されていたが、同社は5月にこの予測が正しいとする報告を行っている。
BCGの報告書は、企業内に存在するかなり多くのサービス職が海外に移転される可能性を示唆している。同社はこの報告書の中で「非製造業務の30〜40%は低コスト国の現地社員もしくはベンダーが担当するようになる可能性があることが分かった」と指摘している。
また同報告によると、インドなどの低コスト国における低コストなどのメリットは、少なくとも向こう20年間は減少することがなく、逆に増大する可能性もあるという。たとえ低コスト国における賃率が予想より早く上昇したとしても、それらの国々では賃金ベースが非常に安いため、実質賃金の格差はさらに広がる可能性がある、と同報告書は指摘する。例えば、低コスト国の工場労働者の時給が1ドルとすると、100%上がっても企業のコストは1時間当たり1ドル増加するだけだが、時給30ドルの先進国の工場労働者の場合は、時給が10%上がっただけでも企業は1時間当たり3ドルのコスト増となる。
また、BCGの報告書によると、業務を海外移転するもう1つの利点は、多くの新市場にアクセスしやすくなる点だという。
さらに、この報告書では、次に海外移転するにふさわしい業務の1つとして、研究開発業務が挙げられている。BCGは「われわれが偶然見出した(海外への業務移転の)最も興味深い利点の1つは、迅速(かつ低コスト)な研究開発(R&D)だ」とした上で、「低コスト国に設立された企業は、自動化や機械設備の設置をかなり排除しているため、(先進国の企業に比べ)R&Dの要求にはるかに応えやすい」と主張している。
米国でR&Dの取り組みが弱まっていることに懸念を抱く業界関係者もおり、こうした人々米国が技術上の優位性を失う可能性があると指摘している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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