「10年先を見据えた成長戦略を」--グリー田中社長が語る起業秘話 - (page 2)

すばらしいサービスを開発するには、テクノロジーが重要

 次に会社の成長戦略についての話題に移った。起業するにあたって、田中氏はサービスを提供するためには、テクノロジーが重要だと考えていた。

 「一定以上の規模の高度なサービスを作っていくのなら、高い技術力をもって、いかにコストを抑えるかが重要なポイントとなってきます。オープンソースを駆使して低コストで、安定したインフラを作るには、高度なテクノロジーが必要なのです。また、早くサービスを改善していくことが何より重要ですが、そのためにも、それを支える高い技術に基づいたフレームワークがなければ実現しません。良いサービスは、技術力が高くなければ作れないというのは、あまり知られていないことではないでしょうか。すばらしいサービスを開発するには、アイデアを実現できるテクノロジーを持つことが何より重要です」

 企業が成長していくには、独自のテクノロジーを持たなければならないという危機感を持つことが必要だと力説。さらに、田中氏は自社での経験に基づき、成長するために新たなサービスを作りたいと思ったときに、すぐに取り掛かれるように、技術的インフラ整備に注力していくことの重要さを説いた。また、グリーの今後の戦略について、田中氏は次のように語った。

 「現在は『グリーといえば、SNS』と多くの人に思われています。しかし、グリーはSNSにとどまらず、次世代のメディアを作っていくインターネットの会社でありたいのです。SNSというサービスも、いずれ普及すれば既存のサービスと同じ道を辿ることになるでしょう。10年前の最新サービスといえば、ホームページでした。5年前はメルマガやMLでした。これらは、今ではありふれた存在です。ブログもSNSもそれと同じ。どんどん普及し、一般化していく存在です。ユーザー、技術も進歩していく。だからこそ、常に新しいものを生み出し続けなければ行けない。『今、なにをしているか』だけでなく、『これから何を生み出せるのか』に注力してます。ネットビジネスの成長戦略は、ほんの3年、5年でとらえてはいけない。5年、10年、そしてもっと先の将来まで見据えていく必要があります」

 田中氏はこの講演の中で、グリーが、次に注目しているのはキャリア、人材系サービスだと語った。この分野にWeb 2.0の要素を盛り込んだサービスを考えているという。グリーでは、求人情報の横断検索やQ&A機能を備えたキャリアサイト「GREE!キャリア」を3月よりサービス開始している。

 今までもあった手法をいかに組み合わせ新しいものを作り出すか、それが今後の成長戦略のテーマになっていくと結び、講演は終了した。

ベンチャーキャピタルがグリーに投資した理由

 セミナー第2部では、田中氏と投資者であるグロービス・キャピタル・パートナーズの小林雅氏が登場し、CNET Japan編集長の西田隆一の進行によるトークセッション形式で、グロービス・キャピタル・パートナーズが投資に至った理由、投資家としての役割とパートナーとしてのあり方を語った。

グロービス・キャピタル・パートナーズの小林雅氏グロービス・キャピタル・パートナーズの小林雅氏

西田 グリーに出資しようと思った理由は?

小林氏 投資においては、経営チームが重要です。グリーという会社の可能性、将来性を感じて決めました。

西田 2004年頃から、投資家もインターネット業界への出資に積極的になっていましたが、田中さんが小林さんからの投資を受けることを決めた理由は?

田中氏 増資することを決めてから、5社ほどに話を聞きに行きました。投資家を選ぶ上で重視したのは、一緒に働いているチームだと思えること。一緒に成長を楽しめる人を選びたかった。それには小林さんがパートナーとして最適だったわけです。また、最終意思決定をするときに、サラリーマン的に「上司に聞いてみる」というのではなく、会社の意志決定に直結している人と組みたかったという点でも、小林さんが一番理想的でした。

西田 投資家の役割とは何でしょうか?

小林氏 ベンチャーキャピタルは、投資家にリターンを返さなければならない。そのためには投資先を見極める力と、その会社を伸ばす力が重要です。より伸びる会社を作れるように、経営者のサポートをすることが私の役割です。投資するかを見極めるときには、GREEが使っているオープンソースベースのアーキテクチャを他社と比べて、どこが優れているかという検証もしました。他社と比較して今後の戦略の方向性や、強化するポイントがわかってきます。

 そして投資後、その部分をサポートしていくというわけです。田中さんに対しては、伸び伸びやってもらうのがいいので、あまり指示はしなくて、困ったときにサポートするという形を取っています。人の採用について間違いがないという点でも、田中さんに経営を任せて大丈夫だという安心感がありました。

西田 田中さんに質問します。小林さんがいてよかったと思うのは?

田中氏 人事評価制度を作る際に協力してもらって助かっています。ただし、一番は、小林さんががんばっているのをみて、がんばろうと思えることです。小林さんを見ていると学べる点がたくさんあります。

小林氏がグリーに投資を決めた際には、良い人材に恵まれているか、チームとして一緒に成長していけるかということが鍵となっていた。ベンチャー企業にとって、より良い人材を確保することの重要性が浮き彫りにされた。

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