BeeTVのマーケティング部門を統括するエイベックス通信放送の村本理恵子氏によると、当初2010年3月末時点で77万人と計画していた会員数が、2009年11月末時点で81万人を突破したという。
BeeTVはエイベックスが映像事業の将来を考える上で、携帯電話の動画配信というビジネスに注目したのが始まり。当時、10Mバイトの高画質動画再生にいち早く対応するなど映像に力を入れていたNTTドコモに声をかけたことで実現した。
他の携帯電話向け動画サービスとスタイルが異なるのも、他社のモバイルコンテンツを意識するのではなく、ユーザーの動向やニーズに焦点を当てた結果とのこと。サービス開始前に携帯電話の使われ方を研究した際、暇つぶしの需要が高いことに着目。ほかの暇つぶし系コンテンツを研究した結果、携帯電話の利用シーンに最も近い存在と感じたのが「週刊少年ジャンプ」などの少年漫画雑誌であったという。少年漫画雑誌は1冊の中に多くのコンテンツが用意されており、さらにそれらが連載という形で毎週継続して楽しめるようになっている。こういった点を参考に、定額料金で毎週さまざまな動画を提供するという、現在のスタイルを思いついたのだそうだ。
では、BeeTVはどのようなユーザーが利用し、どのような番組を視聴しているのだろうか。村本氏によると、BeeTVは元々ターゲットをF1層(20〜34歳女性)に定めていたとのことで、現在のところは狙い通りの層を獲得できているとのこと。とはいえユーザーが女性に偏っているわけではなく、女性がやや多い程度であるという。利用地域も全国に広がっている。このためコンテンツも都市部に向けたものだけでなく、全国各地で路上お笑いライブを繰り広げ、BeeTVの会員を増やすという「どぶ板芸人〜全国路上ライブの旅〜」など、地域色のある番組も用意している。
人気のある番組の傾向については、ドラマなどは女性の人気が高く、どっきりなどのお笑い番組は男性の支持を得ている、といった具合に、男女によって異なる傾向が見られる。
ただ、どちらの性別にも人気なのは音楽だ。BeeTVではエイベックス所属アーティストのミュージックビデオが2000曲以上、カラオケが2万曲以上用意されている。
テレビ番組は通常、3カ月を1クールとして入れ替えられるが、BeeTVの場合はクールという概念はなく、毎月1日、20日に新番組が投入される。配信期間や頻度は番組によって異なり、例えばどっきり系の番組は当初のインパクトが強いものの同じパターンだと飽きられてしまうので、毎日更新で配信期間を短くしている。逆に、ドラマのようにじっくり見られるものは、週2回更新で1本あたりの配信期間を長期に設定している。また、朝は情報系、昼はバラエティ、夜はドラマといったように、番組の内容や視聴傾向によって配信時間も工夫しているとのことだ。
地上波では人気が出なかった番組を打ち切るケースもあるが、BeeTVでは各番組にファンが付いており、お金をとって視聴してもらっていることから、どの番組でも最後まで配信し続ける方針をとっている。
BeeTVはほぼ全てがオリジナルコンテンツだ。ほかの動画サービスのように既存番組の二次利用に頼らないのは、テレビと携帯電話とでは視聴の仕方が違い、飽きずに視聴できる時間も大きく異なっているためだという。10分間の動画をディスプレイの小さい携帯電話で見ると長く感じることから、番組は長くても7、8分程度に抑えている。この短い時間でユーザー楽しませ、かつ次の話につなげていくため、脚本も専用のものを用意しているとのことだ。
ディスプレイサイズが大きく異なることから、携帯電話での見やすさにも注意している。撮影現場では携帯電話サイズのディスプレイを用意し、その場で携帯電話での見た目をチェックできるようにしている。さらに全ての番組に字幕を付けることで、電車に乗っている時などでも音を鳴らさず視聴できるようにした。
テレビ局にも制作を発注するなど、従来のモバイルコンテンツでは考えられないようなコストをかけ、高品質なものを提供することを心がけているとのことであった。さらに制作費とは別に「Good Shereシステム」と呼ぶ収益分配モデルを導入しており、視聴占有率に応じてインセンティブを支払い、制作側のモチベーションを高めて品質を上げる取り組みもしている。
番組の倫理規定については「ネットの方が自由度は高いが、BeeTVはNTTドコモの公式コンテンツとして展開している以上、暴力や性的表現などに自主規制を入れている。子供に影響のあるコンテンツにはPG12指定などの設定もしている」(村本氏)とのこと。テレビと違う点としては「例えばどっきりのように、現在地上波での放映は難しいが、過去に人気を博していたような企画が提供できる」と話した。配信が終了した作品の中にはDVD化しているものもあり、今後、新たな収益源として育てていく構想もあるという。
NTTドコモ以外の携帯電話キャリア向けの展開については、BeeTVはNTTドコモとの独占契約ではないため、展開自体は可能だという。ただNTTドコモは動画コンテンツの配信のインフラや端末が一番整っており、現状では引き続きNTTドコモと協力して展開していくとのことだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」