ソフトバンクモバイルが冬商戦に向けて投入するシャープ製のスマートフォン「GALAPAGOS 003SH」「GALAPAGOS 005SH」は、ワンセグやFeliCa、赤外線通信など日本の携帯電話で一般的な機能、そして裸眼での3D視聴が可能なディスプレイなど、豊富な機能を搭載しているのが特徴だ。
中でも注目を集めているのは、今冬商戦に向けたシャープ製Android端末として唯一、Android OSの最新バージョンである「Android 2.2」に対応しているということだ。そこで、シャープの通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部 商品企画部部長である吉高泰浩氏と、商品企画部係長の奥田計氏に、Androidをプラットフォームとした端末を開発する上で求められる要素などを中心に、スマートフォンにおける取り組みについて聞いた。
003SHと005SHは、ソフトバンクモバイルから冬春モデルとして投入が予定されている、“GALAPAGOS”ブランドを冠したAndroid搭載のスマートフォンだ。フルタッチタイプの003SHは12月上旬、スライドタイプのQWERTYキーボードを搭載した005SHは2011年2月中旬以降の発売予定となっている。
両機種の大きな特徴は4つある。1つ目は、視差バリア方式を採用し、裸眼での3D表示が可能な「NewモバイルASV液晶ディスプレイ」を搭載しているということ。映画やゲームなど豊富な3Dコンテンツを用意するほか、内蔵のカメラで3Dの写真を撮影したり、画像や動画を3D変換したりする機能も備えている。
2つ目は、最新バージョンとなるAnroid 2.2の対応だ。これによってFlash Player 10.1にも対応し、多くのウェブサイトをそのまま閲覧できるようになる。
3つ目は、独自の「TapFlow UI」というインターフェースの搭載だ。多くのアプリケーションの中から、よく使うものが大きく表示されたり、カテゴリ分けして保存できたりするなど、Android標準の機能にはない使いやすさにこだわって作られている。
そして4つ目は、ワンセグ、FeliCa、歩数計、赤外線通信など、日本の携帯電話で一般的な機能を取りこんでいるという点だ。携帯電話から移行したユーザーに向けて、馴染みの薄いGoogleアカウントの登録などを簡単にできるようにする「スタートアップウィザード」も用意している。
奥田氏によると、003SHと005SHを担当したチームは、スマートフォンを初めて手掛けるメンバーが多かったという。KDDIよりAndroid端末「IS01」をリリースするなど、国内でも先駆けてリリースした実績はあるが、「従来とルールやマナーが異なるので、新たに学び直す必要があった」と苦労を語る。
Androidは頻繁にバージョンアップされることから、カスタマイズによってソフトの作り込みをすればするほど新バージョンへの対応がしにくくなる。一方で、作り込みをしなければ特徴を出すのが難しく、いかに最新プラットフォームにあわせて短期間で作り込むかというのが、勝負になってくるのである。
ことスマートフォンにおいては、海外のメーカーも多く日本市場に進出してきている。そうしたメーカーと差別化をするために、ユーザーやキャリアからシャープのスマートフォンにどのようなものが求められているかを考えた時、カスタマイズによる差別化は重要であるとシャープは考える。特に現在、スマートフォンは既存の携帯電話利用者の買い替え需要が中心となっていることから、FeliCaやワンセグなど、これまで携帯電話に搭載されていた機能は最低限搭載するという方針で進めているとしている。
シャープが003SHと同時期に投入する、NTTドコモ向けの「LYNX 3D SH-03C」や、au向けの「IS03」も、日本向け仕様をはじめ、先の特徴のうちいくつか共通した機能を備えている。だが唯一大きく異なっているのはAndroidのバージョンで、他キャリア向けはAndroid 2.1を採用しているのに対し、003SH、005SHはAndroid 2.2を採用している。これはソフトバンクモバイルが、スマートフォン全機種にAndroid 2.2を搭載することを重視した影響が大きいといえるが、実際の開発にはどのような影響があったのだろうか。
吉高氏は、Android 2.2の搭載で苦労した点は、「最新バージョンのリリースのタイミング」と話す。Androidのバージョンアップは必ずしも日本の商戦期にあわせて提供されるわけではなく、メーカーに事前に知らされることもないという。
こういった背景から、日本で新製品を開発する上でタイミング的に苦しい時期にぶつかる可能性もある。今回はまさにそうした時期にAndroid 2.2がリリースされた。しかし、Android 2.2を搭載するというソフトバンクモバイル側の方針が明確にあり、開発や評価をする上で日程は厳しいものだったという。
それでも2.2の搭載を実現できたのは、キャリア、メーカーが共同開発の形で、ともにリスクを取り合いながら取り組んだことにある。Android 2.2が発表されたのは5月だが、「もう少し早いタイミング、例えば1、2月頃に新バージョンが発表されていれば、もっと普通に載せられたかもしれない」とも話す。
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