ソフトバンクは2月2日、2010年3月期第1〜第3四半期(2009年4〜12月)の連結決算を発表した。iPhoneの販売が好調な携帯電話事業が貢献し、営業利益が過去最高となった。
売上高は前年同期比3.2%増の2兆453億円、営業利益は同33.4%増の3663億円、純利益は同63.0%増の948億円となった。
売り上げの61.4%を占める携帯電話事業は売上高が同9.9%増の1兆2642億円、営業利益は同59.4%増の2151億円。iPhoneユーザーの増加でデータ利用量が増え、ARPU(1契約あたりの通信料収入)が伸びたことが大きい。また、新規契約や機種変更の件数が増加し、携帯電話端末の出荷台数が増えて端末の売上も増加した。
ただし解約率は1.16%と、前年同期比で0.25ポイント増加している。割賦販売方式で端末を購入した契約者が、割賦期間が終了するとともに解約したためとのこと。ライバルであるNTTドコモの0.45%、0.67%と比べて高く、ソフトバンクの課題になっている。
また、2010年3月に第2世代携帯電話(2G)サービスを終了することに伴い、30〜40万人の解約者が出る見通しという。ただ、「2Gを停波することで保守費や運用コストが減るので、運営効率は高まる。結果として増益要因になるだろう」(ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏)とし、経営にはプラス材料であるとした。
今後の販売戦略については、引き続きiPhoneを中心に据えていく考え。「モバイルインターネットという新しい時代の流れを切り開く存在がiPhoneであり、いずれはすべての端末がスマートフォン化していくと考えている。iPhoneでスマートフォンに関するノウハウを貯め、同じ戦略をほかの端末にも展開することで成功していける」と孫氏は狙いを語った。
Appleが1月に発表し、日本国内での発売が注目されているiPadについては、「すばらしい製品だと心から思う。それ以上はコメントするタイミングでなく、またコメントする立場にない」(孫氏)と言葉少なだった。
また、Twitterなどでユーザーから電波がつながりにくいという苦情が寄せられていることから、設備投資を控えるという当初の方針を変更することを明らかにした。「最優先課題として、自分が陣頭指揮とりながらやっていく。2010年度には3000億円以上を設備投資にまわす方向で議論している」(孫氏)とした。
なお、ADSL事業を中心としたブロードバンド・インフラ事業、ソフトバンクテレコムなどの固定通信事業、PCソフトなどを販売するイーコマース事業はいずれも減収になった。ただし利益面では全事業で増益になっている。
懸案となっている純有利子負債は2009年12月末で1兆6782億円。ボーダフォン買収時に調達した資金を証券化した借入残高は2010年1月末で9867億円となり、2007年6月から2年半かけて約3600億円を返済。1兆円を切る水準にようやく達した。
2010年3月期通期の業績予想については、売上高は「当社グループが採用する携帯電話端末の販売手法によって大きく変動するため、予想値の公表は困難」(ソフトバンク)として公表していない。ただし営業利益は4200億円と予想している。また、2011年3月期には営業利益を5000億円にするとの目標を掲げている。
なお、ソフトバンクは同日、インターネット動画中継サービスを提供する米Ustreamに約18億円を出資したことを発表している。出資比率は13.7%だが、2011年7月までに出資比率を30%超まで引き上げるオプションを保有しているとのこと。
「フリーキャッシュフローに与える影響を考慮したこともあるが、一度に出資するよりも複数回に分けたほうがリスクが小さく、お互いに健全な緊張感を保てる。ただ、時間の問題で出資比率を30%超にしたいと考えている」と孫氏は話す。議決権の3分の1以上を保有した場合は拒否権を握れるが、「拒否権よりも戦略的パートナーシップを組むことが重要と考えている」(孫氏)とした。
今回の決算発表会はUstreamで中継され、Twitter上で寄せられたコメントも会場内で流された。「UstreamとTwitterは、すべての人に発信できる力をもたらす。Web 2.0時代の新聞がTwitterなら、テレビがUstreamだ」(孫氏)とこれらのサービスが持つ可能性を訴えていた。
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