日本のケータイは本当にガラパゴス化なのか!?

戸口功一(株式会社メディア開発綜研)2008年11月26日 11時55分

 2008年も残り1カ月になりました。今年はiPhone 3Gが話題を独占したといっても過言ではないでしょう。そのフォルムやインターフェイスにはビックリ、発売日には行列が出来、何処まで出荷台数が伸びるのかといわれていました。

 2009年はアンドロイド携帯の登場、そしてノキアがMVNOで日本市場に参入するという話もあります。いずれも移動通信業界の黒船を彷彿させる出来事です。まさに開国を迫る幕末に酷似しているかのようです。

 日本のケータイ業界をガラパゴスに喩えられることがあります。閉ざされた中で成長したため、世界とは異なった進化をしてしまったというのだそうです。

 そして今、黒船が開国を迫り、尊皇攘夷派は日本のケータイビジネスを世界と対等に戦えるように制度改革、規制緩和を実施する構図となっているようです。なるほど、文明開化の鐘が鳴り、日本もようやく近代化の道を歩いていけそうです。

 ん…、何かおかしくないですか?ケータイは日本独自に進化してきたことは確かです。日本の特殊な商習慣に起因する形で生まれたハイスペックケータイの進化は、その頃の世界には通用しないものでした。iモードのようなデジタルコンテンツプラットフォームも世界にはありませんでした。

 そして今、世界はどうなっているのでしょうか。Apple社にしろ、Google社にしろ、日本がすでに始めていたビジネススタイルを違った形で具現化しているに過ぎないのではないでしょうか。App Storeしかりです。

 対世界でみると、当時は日本が進化しすぎていたのではないでしょうか。世界が日本を相手にしなかったのではなく出来なかったのです。よくマーケットとして日本は小さすぎるから進出しなかったという話を聞きます。ではなぜ外資系企業は今、日本の市場へ目が向いているのでしょう。マーケットの規模が小さいはずなのに…。

 行政はなぜ、世界と対等に戦うために規制緩和を行うのでしょうか。すでに先人達は世界に戦いを挑みに海を渡っているのです。その当時世界は日本の進みすぎたシステムを受け入れることが出来なかったのではないでしょうか。文化は押し付けるものではありません。求められて広がっていくものです。

 日本はいい意味でのガラパゴス化であったはずです。ただ国内でビジネスが硬直化していたことは認めざるを得ません。この部分は海外の動向をみて決めるのではなく、進化していたビジネスモデルを世界にみせつけるために自ら改革すべき問題でした。

 官製不況の煽りを受けて急激に落ち込むモバイルビジネスですが、キャリア各社は氷河期を打破するために冬商戦に望みをかけます。各社の冬のラインナップが発表されました。ここに日本の驚くべき順応力がみてとれます。iPhone 3Gのタッチパネル機能を数カ月で商品化しているのです(勿論日本製だけではありませんが…)。さらに高画質、ガジェット等、機能においては短時間で修正してくる能力があります。

 すでに優位性がなくなってしまった日本のケータイビジネスですが、世界の先駆けとして「お家芸復活」を期待しています。

◇ライタプロフィール
 戸口功一(とぐち こういち)
 1992年(株)メディア開発綜研の前身、菊地事務所(メディア開発綜研)にてスタッフとして参加。2000年法人化で主任研究員、2005年より主席研究員。1992年電通総研「情報メディア白書」の編集に参加。現在も執筆、編集に携わる。その他、インプレス「ケータイ白書」、新映像産業推進センター(現デジタルコンテンツ協会)「新映像産業白書」、「マルチメディア白書」、「デジタルコンテンツ白書」の執筆および経済産業省、総務省の報告書等を多数手掛ける。

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