先週の東京株式市場で、日経平均株価が54年ぶり12営業日続落を記録するなど歴史的な全面安迷状態にあるなかで、7月に入って底打ちから逆行高を鮮明にしている銘柄がある。ソフトバンンクの株価は、先週末の7月4日こそ小幅反落したものの、7月1〜3日にかけて3日続伸をみせた。“個人投資家の一番人気銘柄”とされるソフトバンクは、果たして全体相場の救世主となれるのか、悲観一色となっている地合いの中で、なぜソフトバンクが買いを集めているのかその背景を探った。
当コラム2008年6月10日付の“ソフトバンク株の行方--「iPhone」発売決定も不透明感ぬぐえず”でも指摘したように、6月4日に「iPhone」を日本国内で発売すると発表したソフトバンクの株価は、発表翌日5日こそ株価が上昇したものの、その5日の高値1991円を天井に株価は下落トレンドとなり、6月30日には1790円の安値をつけた。しかし、7月に入って全体相場の下げが加速するなかで、逆に反転上昇を鮮明にしてきた。
この株価上昇の背景について市場関係者は「単にiPhoneの日本での販売権を得ただけであれば、実際にiPhoneの売上状況を見るまでは、株価を大きく上昇させる材料とはいえない。しかし、孫正義社長が、iPhoneを単なる携帯端末のひとつのバリュエーションではなく、今後のインターネット革命の主戦場が従来のパソコンから無線の携帯端末に移行することを予測し、近い将来携帯端末がインターネット社会の主力ツールとなることを展望していることを評価しているのではないか」としている。
また、今後急速にインターネットの普及率が加速する中国、インドなど膨大な人口を有するアジア地域での携帯端末を利用したインターネット事業での盟主を目指すという戦略の大きさが徐々に理解されてきたとの見方も浮上している。
実際に孫社長は6月25日に開催した株主総会で「2008年は携帯電話のインターネットマシン元年になる。そして、それはiPhoneがけん引していくだろう」と自信に裏付けられた展望を語っている。
さらに孫社長は「これまで携帯電話は通話中心に利用されてきた。このため、通信会社の収入も音声収入が大半だった。ところが、CPU(中央演算処理装置)の速度や通信速度、画面の解像度向上といった技術の進歩と同時に、携帯端末がインターネットの閲覧に適した機能を備えるようになってきた。これに伴いデータ通信による収入が大半を占める時代が来る。iPhoneの料金体系も、音声収入よりデータ収入のほうが大きくなる」とも述べており、iPhoneの登場が携帯電話の顧客1人あたりの単価(ARPU)が急速に上昇することを想定し、これによる大きな収益の向上を見込んでいる。
全体相場が3月半ば以降反転上昇に兆しをみせていたにも関わらず、ソフトバンクの今年に入っての株価は、2月20日に2330円の高値をつけて以降、ほぼ一貫して下落調整トレンドを強いられていた。したがって、時価総額の大きな他の主力銘柄に比べて株価面では大きく出遅れているのは事実。先週末4日の株価1899円で試算した今期連結PERは17倍水準とIT関連銘柄としては割安水準といえる。今後7月11日のiPhone発売以降の売れ行き動向によっては、株価の反発が加速することも十分期待できそうだ。
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