前回、オンライン音楽全体についてMIDEMでの動きをまとめたが、今回は携帯電話での音楽配信について欧州での動向を紹介する。
“ケータイで音楽”は、なにも新しいものではない。「iPod」の爆発的ヒットを受け、2004年ごろから英Sony Ericssonの「Walkman」ケータイのように、携帯電話メーカーはどこも音楽機能をメインに押し出した機種を開発している。
問題は、音楽の入手方法だ。一般的なのは、PCにある音楽を携帯電話に移す「サイドローディング」といわれる方法。携帯電話をMP3プレイヤー代わりに利用するので、初心者向きといえる。携帯電話を使って音楽を購入する「OTA(Over the Air)」方式は、こちらでは先進ユーザー向け。音楽サービスはオペレータがポータルサービスの一環として提供しているもののほか、昨年ローンチした英Omnifoneなどの専用事業者も出てきており、一般的になりつつあるところだ。
このOTAで新しい動きが、携帯電話メーカーの参入だ。昨年夏、最大手Nokia(フィンランド)がインターネットブランド「Ovi」を発表、年末に英国で音楽サービス「Nokia Music Store」をローンチしている。続いてSony Ericssonも昨年末、着メロダウンロードサービスの「PlayNow」を強化し、楽曲をフルでダウンロードできる「PlayNow arena」をスタートすることを発表した。今年1月のMIDEMでレーベル10社との提携を発表、今年中ごろにスタートする計画だ。
中でも、大きなショックを与えたのがNokiaだ。Nokiaはその後の昨年12月、対応機種を購入したユーザーに1年間無料で音楽をダウンロードできるサービス「Nokia Comes With Music」を発表した。発表時、最大手レコードレーベルのUniversal Music Groupと提携を発表、Universalの楽曲を無料配信するとした。WMA DRMを採用、ユーザーは楽曲を保有でき、PCに移動することもできる。定額制のOmnifoneは、契約を解除すると音楽がなくなってしまうので、これよりもユーザーの権利が大きい。対応機種、音楽カタログなど詳細は不明だが、Nokiaはこれで、正面から米Appleに対抗することになる。だが、狙いはAppleユーザーの獲得にとどまらず、携帯電話で音楽を購入する敷居を、まずは料金の面で低くしようということのようだ。
このように、携帯電話メーカーがサービスに乗り出すことで、モバイル音楽市場はさらに活性化するだろう。だが、オペレータからは非難の声も上がっている。仏Orangeは、2つ(自社とNokia)の音楽サービスを利用できることは、顧客の混乱を招くとして、反対している(OrangeはDRMフリーの定額制サービスを開始する意向を見せている)。一方の英VodafoneはOviサポートを明らかにしているし、データトラフィックが増えると見るオペレータもある。このように、コンテンツに対するオペレータの戦略も分かれてきた。
現在、モバイル音楽は録音音楽売上げの13%を占めるというが、2011年には約30%に拡大すると予想されている。今年後半からの動向は要注意だ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力