モバイルサイトの構築を“今のうちに”しておく時代は終わり、現在は“今ならまだ”というフェーズである。そしてそう遠くない将来には“いまさら”となってしまうのが明らかになりつつある。
IP接続が可能な携帯電話が2007年9月の時点で約8653万2200台あり、携帯電話でのネット接続はPCのそれを上回っていることからも分かるとおり、モバイルサイトは隠れた鉱脈ではない。多くの資源が眠り、採掘者が先を争って掘っている金鉱なのである。豊かな鉱脈ではあるが、当然有限である。有限である以上、先行者が有利なのは間違いない。だが、今ならまだ間に合う。
限定された用途でなら、PCサイトをモバイルサイトに変換するサービスやGoogleモバイル広告向けAdWordsビジネスページなどの利用も考えられるが、ここではゼロから常設のモバイルサイトを構築する際に留意するべき「広告出稿時に引っかかりやすい外側のポイント」を挙げてみたいと思う。
一般的な携帯電話には、PCのブラウザでいうところのアドレスバーが存在していない。そのためURLの“見た目”は軽視されがちであるが、覚えやすさと分かりやすさ、そして打ちやすさを考慮したURLを用意するべきである。
携帯電話でのウェブアクセスにおいてユーザーがURLを打ち込む機会は多くないが、無視できるほど少なくもない。特に初回のアクセスでは17%が直接入力によってアクセスしているとの調査結果もある。
携帯電話での打ちやすさだけを考えれば、例えばアルファベットにした場合2〜9を順番に打つと変換される「adgjmptw.bz」のようなアドレスが優れているといえるが、URLがサイトの顔として機能している以上、サービス内容や企業名をURLに組み込んだ方が印象に残りやすい。
そして、URLのサブドメインからトップレベルドメイン(TLD)までは20文字以内にしなければならない。
なぜか?
Google AdWordsのモバイル広告で表示できるURLが20文字までだからである。
仮にモバイルサイトのURLが「k-tai.e-research.biz」だとしたら、20文字ちょうどなのですべて表示できる。検索結果がクリックされなくても、ユーザーに覚えてもらえれば成果に繋がり得るのが表示URLである。
だが、もしも「mobile.e-research.biz」だとしたらどうなるだろう?
「mobile.eresearch.biz」「m.e-research.biz」「e-research.biz」など、正確ではないURLを表示せざるを得なくなり、覚えやすいURLを準備した意味がなくなってしまう。
auの2007冬の新モデルとして、ついに待ち受け画面でGoogle検索ができる機種が発表され、モバイルサーチエンジンマーケティング(SEM)はますます盛り上がりを見せている。有力な媒体であるGoogle AdWordsでの取りこぼしを避けるためにも、URLの文字数に気を配って欲しい。
分かりやすく、覚えやすく、打ちやすい。そんなURLは有限である。有限ではあるが、今ならまだ間に合う。
モバイルサイト固有の機能として、機種やキャリアの識別が求められる。多くのサイトではユーザーエージェント(UA)やIP帯域によって該当ページにリダイレクトする、という手法を取っている。
そこで注意しなければならないのは「リダイレクトは1回まで」という原則である。
SoftBankのほぼすべての端末、そしてDoCoMoの一部の端末ではリダイレクトが連続して3〜4回続くとエラーが発生し、読み込み自体が停止してしまうためだ。
広告を出稿した場合、媒体社側がクリック数を計るため、ほぼ必ずURL変換=リダイレクトが行われる。3回以上でエラー発生の可能性が急激に高まるため、安全を考えるとサイト側でのリダイレクトは1回しか行えないのだ。
当然のことだが、成果計測ツールの仕様も考慮しなければならない。リダイレクトによって計測するツールは、積極的な理由がない限りは導入しないのが無難である。あとから他のツールに乗り換えるのは実に手間がかかる作業となってしまう。
SoftBank用の「リダイレクトを行わないURL」と、DoCoMo、au用の「リダイレクトを行うURL」を別に用意して出稿するという手段も広く使われているが、5カ月連続で純増数首位を達成し、シェアを着実に増やしているSoftBankへの対応はきちんとしておくべきである。この点においては今から構築するモバイルサイトが旧Vodafone時代に構築された先行サイトより優位になり得るが、のんびり構えていたら後出しじゃんけんの有利さは消えてしまう。だが、今ならまだ間に合う。
どれほどコンテンツが優れていても、どれだけ優れた商品を用意していても、ユーザーが集まらなければ意味がない。いざキャンペーンを打って人を集めようとしたときに、細かい、だが解決が難しい事情で出稿が制限されたり媒体のポテンシャルを十分に活かせないようでは、わざわざサイトを作った甲斐がない。今ならまだ……モバイルサイトを持っていない今ならまだ間に合う。逆に言えば……今でないと間に合わない。
木内拓(株式会社セプテーニ)
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