8月16日の安値16万2000円を二番底に、NTTドコモの株価が反転上昇の兆しを鮮明にしている。同社株は2月27日に年初来高値22万9000円を付けて以来、ほぼ一貫して下落トレンドを強いられるなど、これまで物色の圏外にあったといっても過言ではない。
8月からの世界同時株安など物色の流れに変化が生じている中で、NTTドコモが動意づいてきた背景を探った。
NTTドコモの株価が上昇傾向を見せ始めた要因について市場関係者は「携帯機器を通じてネット接続し、高画質の動画をやりとりすることなどが可能となる次世代高速無線通信にドコモが積極的な姿勢を見せていることに対する期待感が強まっているようだ」としている。
NTTドコモは総務省が次世代高速無線通信用に新たに開放する周波数帯について、デジタル高速通信であるADSL大手のアッカ・ネットワークス、TBS、三井物産と共同で免許取得を進める協議に入った。
さらに、同社は8月30日、コンピュータを内蔵し、音声通話以外にさまざまなデータ処理機能を持った携帯電話である「スマートフォン」と呼ばれる多機能電話2機種を、年度内に発売すると発表した。
スマートフォンは電子メール機能やWebブラウザを内蔵し、インターネットに接続することができる携帯電話で、NTTドコモのiモードはすでに、このサービスを利用したものと言える。他にも、個人情報の管理やスケジュール管理、メモなど、従来は電子手帳や携帯情報端末が持っていた機能を内蔵したものがある。
発売予定の新機種は、キーボードを搭載せずに小型化したもので、台湾HTC製の「HT11000」は操作用のボタンの他に、画面を指でなぞって操作するタッチパネルも採用している。
一方、富士通製の「F1100」は通常の携帯電話のようにボタン操作するタイプ。2機種とも価格は3万円台となる見通し。ドコモの場合、従来スマートフォンの販売は、法人営業部門やインターネット通じていたが、今回の2機種からは販売店「ドコモショップ」や家電量販店でも取り扱えることになる。
ちなみに、8月31日の東京株式市場ではこのスマートフォンの製造で名前が挙がった富士通の株価が前日比47円高の792円と久しぶりの急騰をみせた。出来高も東証1部で4位の3329万株と大きく膨らんだ。
NTTドコモが発表した2007年第1四半期(4〜6月)の連結業績(米国会計基準)は、売上高1兆1828億円(前年同期比3%増)、営業利益2038億円(同25%増)、税引き前利益2054億円(同25%減)、純利益1228億円(同25%減)と伸び悩んだ。2006年10月から導入された「番号継続制」では携帯電話主力3者の中で唯一顧客流出超過が続いたことに加え、基地局増設の経費増、さらに減価償却方法の変更に伴う経費負担の増加などが大幅減益を招いたようだ。
しかし、第1四半期が大幅減益となったにもかかわらず、通期の営業利益は従来予想の7800億円を変更していない。
NTTドコモの株価は、先週末31日終値で17万7000円となっており、連結予想PERも17倍ちょうどと割安水準となり、配当利回りも2.71%と高水準となってきている。中期的には20万円台の回復も十分期待できそうだ。
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