モバイル業界のキーパーソンが一堂に会したイベント「モバイル・ビジネス・サミット」が7月6日、7日の2日間、福岡県のホテル日航福岡で開催された。
「日本発モバイルサービスの海外戦略」と題したセッションでは、海外でモバイルサービスを展開する、タイトー、サイバードホールディングス、フラクタリスト3社の担当者が登壇。インデックス・ホールディングス取締役の大森洋三氏をモデレーター役に、パネルディスカッションが行われた。
はじめに登壇したのは、タイトー執行役員ON!AIR事業本部長の笠間信一郎氏。世界各国でゲームコンテンツを配信する企業として、コンテンツ配信の観点から世界のモバイル事情を解説した。
笠間氏によると、モバイルコンテンツの市場には、欧米に見られる「成熟したコンテンツ市場」と東南アジアをはじめとする「発展途上のコンテンツ市場」があり、そのどちらにもそれぞれ課題を抱えているという。
まず欧米の成熟したコンテンツ市場においては、ローカルコンテンツプロバイダーの統廃合が進んでいるという。その結果、日本企業が数年前に契約したコンテンツプロバイダーも統廃合され、ライセンスのコントロールが効かなくなっているのが現状で、継続的な新規コンテンツの提供が求められている。一方、ベトナムやインドネシア、アフリカなど発展途上の市場では、ノキアやモトローラなどの高機能端末が流通しても、キャリア課金システムの未整備や海賊版の横行といった問題があり、現在のところ魅力あるコンテンツ市場にはなりづらいという問題点を挙げた。
タイトーでは、現在モバイル向けのゲームコンテンツ「スペースインベーダー」を、欧州を含む全世界64カ国202チャンネル(契約数)で展開しており、その中で販売代理店を通さないキャリアとの直接契約による売り上げは全体の70%を占めるという。笠間氏は安定したビジネスのためにも直接契約が重要だと説明する。「代理店は黒子的存在。直接契約で70%はやる」(笠間氏)。また、契約数が下がった際、対応端末を追加することで、契約数を大きく伸ばした経験から、「新規コンテンツの流通より、端末への対応が非常に重要」と述べた。
次いで、サイバードホールディングス取締役の岩井陽介氏が、北米のモバイルサービスの現状を説明した。
岩井氏の説明によると、米国の携帯電話加入者数は2006年に約2億2300万人で、総人口の70%にあたる。すでに加入率が人口の80%を誇る日本に比べ、北米は携帯電話のヘビーユーザーがこれからも増えていく傾向にあり、今後の市場の伸びが期待されるという。
また、データ通信のARPU(月間電気通信事業収入)は、まだ低いが右肩上がりが続き、3Gの普及も急速に進んでいるという。一方、キャリアは合併が続いた結果、現在は4つに大きく集約されており、日本同様に大手の力が強く、大手の先導で各社の施策が決まっていくという業界勢力となっていると説明した。
北米のモバイル市場における注目はやはり、初月販売台数が50万台を記録したAT&TのiPhoneだという。またそのほか、MVNOにも注目が集まっているという。MVNOは全体シェアの10%程度におよび、広がりを見せる一方、1〜2年で事業を撤退した例もあり、必ずしも成功しているとはいえないのが現状だという。また、コンテンツについては壁紙や着信メロディといった旧来のものから着うたや着せ替えツールといったものから動画やゲームといったリッチコンテンツに移行するなど、日本と同様の傾向にあり、ベライゾンのV-CASTなど、動画が特に注目されていると語った。
そして、フラクタリスト代表取締役社長の田中祐介氏が、中国のモバイル市場について語った。中国はモバイルユーザーが世界一多い国であることからも、海外進出の目玉として注目されている。
田中氏は、中国のネット利用手段として、WAP(Wireless Application Protocol:モバイル向けの通信プロトコル)を使ったモバイル経由のアクセス利用者が2億人を超え、中国でもネット接続にモバイルを利用することが一般的になりつつあるということを紹介。モバイル広告市場については、2006年では5億元(約70億円)程度になると説明。その内訳は、50%程度がショートメッセージ、WAPが16%、バナー広告が12%、その他が20%となっており、モバイル広告については日本に類似した傾向であると明かした。
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