モバイルコンテンツ、2008年度の市場変化は「リッチ化」と「権利ビジネス化」

?瀬一樹(ドコモ・ドットコム コンサルティング部チーフ)2009年05月12日 19時11分

巨大マーケットに成長したモバイルコンテンツ市場、満10歳

 2009年2月に10周年を迎えたiモード。これは同時にモバイルコンテンツ市場にとっても10回目の誕生日が訪れたことを表している。10年前はモノクロ画像や、音色の少ない着信メロディ、250文字制限のメールなどが「最新コンテンツ」であった当市場であるが、今や多くの著名アーティストがCD発売前に着うたフルを配信し、「ファイナルファンタジー」を始めとする人気ゲームはモバイル専用に続編やオリジナルストーリーをリリースするようになり、紙ではモノクロだった「ドラゴンボール」などの名作マンガは色鮮やかに着彩された電子書籍として配信されるようになった。

 そんな他のメディアでは手に入らない、魅力的なコンテンツが溢れるモバイルコンテンツ市場の市場規模は2007年時点で年間4233億円に達しており(2008年7月MCF発表)、2008年度はさらに1回り大きな数値となる可能性が非常に高い。

 この4000億円という数字は国内の他のコンテンツ市場と比べても遜色がなく、少年漫画誌市場のピークである1997年、年間発行部数が15億冊を突破した際の4070億円(出典:全国出版協会「出版指標年報」)に匹敵し、2008年のゲームソフトの市場規模3321億円(2009年1月エンターブレイン発表)や、アニメーション市場のピークである2006年の2415億円(2008年7月メディア開発綜研発表)、2000年から横ばいの国内映画市場(洋画・邦画)の2000億円を凌駕する。

モバイルコンテンツ市場の市場規模(※画像をクリックすると拡大します) モバイルコンテンツ市場の市場規模(※画像をクリックすると拡大します)

急増するサイト「寡占戦略」と「全方位戦略」

 市場の拡大を牽引するのは新たなモバイルコンテンツ配信サイトの登場である。2008年度は特に新規参入が活発であり、i-menu掲載サイト(FOMA)数は、2007年3月末時点で1万2260サイトであったのに対し、2009年3月末時点では1万6587サイトにまで増加している(出典:NTTドコモホームページ「契約数月次データ」※注1)。

 ※注1:年間で4000サイト以上が増えた計算になるが、ここで言うサイト数とは課金コースが単位となっているため、メニューリストに存在する「メニュー数」の増加数は1500程度と推測される。

i-menu掲載サイト(FOMA)数 i-menu掲載サイト(FOMA)数

 こうした急激なサイト数増加の背景には、他のメディアで活躍する企業や、これまで全くモバイルとの接点がなかった一般企業がビジネスチャンスを狙って新たに市場に参入してきたことに加え、大手コンテンツプロバイダ数社が単独サイトの売上を伸ばし続けていく戦略から、複数の新規サイトを創設し続ける戦略に転換したことも要因として挙げられる。

 この戦略は大きく分けるならば2種類に分類できる。1つ目は同一のジャンルに新規サイトを創設し続け、同種のユーザーを囲い込む「寡占戦略」だ。占いコンテンツを例に挙げると、毎月新規サイトを創設し続けることで、「目新しい占いを楽しみたい」という定常的に発生するニーズに応えることができる上、既存の自社占いサイトを利用中の顧客、すなわち占いに対して対価を支払っても良いと考えている占いロイヤルカスタマーに対して新たな提案を行なえる。

 また、同種のサイト構築はスケールメリットによって開発コストの削減が実現できる上、何よりも自社にコンテンツ制作と運営に関するノウハウが蓄積されていく。これは非常に理にかなった事業戦略であり、占いジャンルの他、デコレーションメールやゲームなどのジャンルにおいても同様の手法によるサイト創設ラッシュが見受けられた。

 2つ目は、幅広いラインアップで新規サイトを創設し続け、各ジャンルの制覇を目指す「全方位戦略」だ。例えば属性の合致しない膨大な数のメールアドレスを保有している企業の場合、これらの広い客層のニーズに応えるためには全ジャンルにサイトを創設することが理想的である。

 先述のような専門店型の企業の場合、大型の広告を行なえば行なうほど広告には無駄が発生してしまう。テレビCMやキャリアメニュージャック広告などは、限りなく男女比が人口比率に近いはずであるから、女性向け占いサイトの告知であれば自動的に50%はロスしてしまうといっても過言ではない。

 しかし全方位戦略を行なう企業にとっては、「無料ゲーム」「無料デコメ」など、客層を選ばない大型プロモーションによる集客から、各姉妹サイトへの誘導といったコンビネーションが成立する。また、ロングスパンで見るならば、個人の趣味の移り変わりや加齢によるニーズの変化にも対応ができるなど合理性が高い。広告収入を目的とした複数の大型無料サイトを営んでいる企業を中心に、積極的なサイト展開が行われていた。

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