インターネットの普及は、テレビやラジオなどのマスメディアの衰退を招くと言われて久しい。特にラジオ業界は、2005年に広告費ベースでインターネット広告がラジオ広告を上回り、衰退が著しいと言われている。
そのような中、ラジオ業界に大きな変革をもたらすと期待されている新たな取り組みとして、注目を集めているサービスがある。それはIPサイマルラジオ「radiko.jp」である。
パソコンがそのままラジオ受信機となるIPサイマルラジオの実用化試験配信が3月15日より開始され、4月14日までの1カ月で総ストリーム数が1749万に達した(IPサイマルラジオ協議会 プレスリリースより)。また、1ストリームあたりの平均聴取時間が22分2秒であったといい、順調な滑り出しと言えよう。
弊社視聴率データで見ると、2010年3月は143万人が「radiko.jp」へアクセスしていた。サービス開始直後でいきなり100万人を超える利用者を集めており、インターネット利用者の注目を集めているサービスと言えるだろう。
また、週別にトレンドを見ると、radiko公開直後の週が最も高く、1週間で87万人がアクセスしていた。
− | 3/7 | 3/14 | 3/21 | 3/28 | 4/4 | 4/11 |
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radiko.jp | 2万人 | 7万人 | 87万人 | 58万人 | 46万人 | 38万人 |
では、いったいどのような人がアクセスしていたのであろうか。弊社視聴率データによると、男女比では圧倒的に男性の割合が高く、サイト利用者の86%が男性であった。年齢別では、30歳代の利用者が多く、次いで40歳代が続いていた。
性別 | 利用者数 | 構成比 |
---|---|---|
男性 | 123万人 | 86% |
女性 | 20万人 | 14% |
年代別 | 利用者数 | 構成比 |
19歳未満 | 4万人 | 3% |
20歳〜29歳 | 14万人 | 9% |
30歳〜39歳 | 56万人 | 39% |
40歳〜49歳 | 31万人 | 22% |
50歳〜59歳 | 14万人 | 10% |
60歳以上 | 25万人 | 17% |
ビデオリサーチ社が提供している首都圏や関西圏のラジオ個人聴取率と比較すると、ラジオのメインリスナーである50歳以上の利用者割合が低く、一方でインターネット利用者の多い30歳〜49歳のアクセスが高い傾向が見られた。(ビデオリサーチ:首都圏ラジオ調査(2010年2月度)、関西圏ラジオ調査(2009年12月度)より)
IPサイマルラジオ協議会によると、「時間帯別の聴取状況によると、夕方から深夜にかけて聴取者が増加するという、通常のラジオ放送の聴取パターンとは異なる傾向が見られ」たとのことで(IPサイマルラジオ協議会 プレスリリースより)、利用者属性の違いがそのような結果に表れたのではないだろうか。
radikoの開始は、今まであまりラジオを聴いていなかった層を取り込み、リスナーを拡大する非常によい機会であると言えよう。
また、インターネットでラジオが聞けることに対するインターネット上での口コミのトレンドを見ると、試験配信を実施すると発表した週と実際に試験配信が行われた週に増加していることがわかる。
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ニュース記事 | 1件 | 4件 | 45件 | 50件 | 14件 | 85件 | 36件 |
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試験配信が開始した3月15日頃は、「これはありかも」「音声がクリアで快適」といった好意的な評価とともに、「ホームページが重い」「地域制限をなんとかしてほしい」といった運用面での課題が散見された。
その後、4月6日に非公式のiPhone用無料アプリが公開され、「iPhoneでラジオが聞ける」とiPhoneユーザーを中心にtwitter上で口コミが広まった。また、その直後、radikoのセキュリティ強化により、同アプリが使用できなくなったため、今度は「聴けなくなってしまった」との声が増加していた。
その他の声としては、「ラジオってこんな楽しかったんだ」とラジオの良さを再認識するコメントや、「久しぶりにラジオを聴いた」「昔ラジオを聴きながら受験勉強をしていたことを思い出した」といった、一度ラジオから離れていった人がradikoをきっかけに聴きなおしてみた、といった声があった。
エリア外聴取の制限についても「残念すぎる」と嘆く声や、「エリア外聴取のデメリットはわかるのですが、そうも言ってられない時代なのでは」と一応の理解を示しつつも、ボーダレスなインターネットの世界にエリア制限をかけることへの疑問の声が目立った。
IPサイマルラジオ協議会のリリースによると、4月12日にリリースした、ウェブブラウザを起動しなくても簡単に聴取できる「radikoガジェット」が、約2週間で24万ダウンロードを超えたとのこと。また、公式のiPhoneアプリを申請中であることも発表しており、今後どこまで“インターネットリスナー”が増加していくか非常に楽しみである。
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